経理業務は多岐に渡り、会社全体に関わる業務は数多くあります。
業務の見直しを行うには、手間と時間、コストも発生するため、現状後回しにしている企業は少なくありません。
業務の見直しにあたり業務フローの作成は、作業を効率化する上でもっとも有効的な手段です。業務を可視化し現在の作業を見直すことで、問題点や改善点が見えてくるだけでなく、経理部門内外の業務範囲や責任範囲を明らかにすることができます。
業務フロー作成にあたっては、アウトソーシングを活用するとスムーズに行うことが可能です。
アウトソーシングサービスは、業務フローを構築するサービスから、経理業務の一括代行や一部の業務を委託して行っているサービスがあります。
手間や時間を省き、よりスムーズに業務効率化を目指すには業務フローを作成し、さらには活用することが大切です。そのための有効手段として自社にあった外注先を見つけ活用していくことが得策です。
全体業務の設計
多岐にわたる経理業務は、企業の全部署に関係する業務が多くあります。
そのため経理業務の理想的なオペレーションを考える際、実務を担当している経理部門だけでなく会社全体として改善点はないか考えることが大切です。
例えば、経費精算や支払業務において、書類の取りまとめを経理部門で行っている企業は多くあります。そのため経理部門では、書類が全て揃うまで未決管理をし、情報収集や事務作業に時間をかけているケースが頻繁に発生します。
会社全体として、どこで業務が遅延しているのか、無駄な作業が発生していないかの背景を知ることで、よりスムーズな業務フローを設計することが可能になるのです。
業務フローチャートの必要性
業務フローとは、業務のプロセスをわかりやすく図にしたもので、フローチャートと呼ばれています。
業務フローチャートを作成することのメリットは、業務を可視化することで効率化が図れること、現在の問題点を把握できること、現状のフローの見直しが最適に行えることなどです。また、業務に携わる人が共有することで各担当者の役割や目標が明確にでき、新しく業務に関わる人にもわかりやすい資料になります。
業務フローを社内で根付かせ活用することは会社全体の生産性向上に繋がるでしょう。
どんなフローチャートが必要?
経理業務は作業が多岐に渡るため、それぞれの業務においてフローチャートを作成することが大切です。また業務間において連携が必要であれば、それに見合ったものを作成していかないとスムーズな業務ができなくなります。
では具体的に、業務ごとに必要な業務フローを確認していきましょう。
販売管理
販売管理は営業部門や製造部門、経理部門、マーケティング部門など様々な部門と繋がっています。会社の売上に関わり、企業活動において重要な業務です。
販売管理のフローは大きく以下の5つに分けらえます。
1.受注管理
商品の見積もり、契約の締結、受注
2.出荷管理
商品の手配や梱包、出荷、納品
3.請求管理
受領証の発行、請求書発行、回収
4.仕入管理
部品や材料の見積もり、購買契約締結、発注、入荷検品、支払い
5.在庫管理
在庫の受払、材料数の管理、仕入れ数の管理、発注依頼
購買管理
購買管理とは、企業が購買におけるプロセスを適切に管理することを言います。
購買業務は、必要な資材や材料を外部から購入する際に「高品質なものを」「適切な量だけ」「できるだけ安く」「必要なタイミングで」購入し、必要な部署へ届ける業務です。
購買業務のフローは以下に分けられます。
1.購買計画
取引先の選定、見積もり
2.発注・納期管理
取引契約締結、発注書作成、納期確認
3.入荷・検収
品数や品質のチェック
4.請求・支払
請求書チェック、支払処理
固定資産管理
固定資産とは、事業が円滑になるよう1年以上使用するもので、10万円以上のものが対象です。土地や建物などの「有形固定資産」、営業権や特許権などの「無形固定資産」、有価証券や長期貸付金などの「投資その他資産」の3つに分けられます。
固定資産管理のフローは以下の通りです。
1.支払や減価償却の管理
会計処理、減価償却額の算出
2.固定資産管理台帳の作成
固定資産管理台帳・償却資産台帳・リース資産台帳の作成
3.管理ラベルの貼付
固定資産台帳の資産コードを記載したラベルの貼付
4.現物実査(棚卸し)
固定資産台帳と実資産の照合
資金管理
資金管理とは、企業が事業に必要な資金を準備し管理することで、黒字倒産防止などのため支払能力を維持することが目的とされています。
資金管理は以下の3つの業務があります。
1.資金計画
資金計画の作成、資金調達
2.資金統制
金銭の出納管理、小切手や手形の受払記録の作成、出納帳や勘定帳などの照合
3.資金効率性分析
資金計画と実績の差異分析、売上債権・買入債務の回転率チェック、利益計画・資金計画の整合性チェック
決算業務
決算業務とは、1年間の自社の財政状況や経営実績を確定する業務です。作成された決算データは株主や投資家、取引先などに公開されるだけでなく、法人税や消費税を納付するための指標となります。
決算業務は以下のフローで行います。
1.決算整理
未処理仕訳の有無チェック、残高確認
2.決算書作成
貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の作成
3.税金の計算
消費税・法人税・法人住民税・法人事業税の算出、確定申告書の作成、納税
フローチャート作成後の見るべき点
業務フローを作成したものの、フローがわかりにくく実際に使用できないというケースが見られます。作成するフローチャートは、誰の目から見ても理解ができ、目的に沿ったフローでなければいけません。
業務フローを作成したら、以下の点に注意して確認していきましょう。
未完全なプロセスがないか
プロセスが未完全だと、後工程の作業に繋がりません。一つひとつのプロセスが完了しているかチェックしましょう。特に複数部門をまたぐ業務において、それぞれの業務範囲と責任範囲はどこまでなのかを明確にする必要があります。
例えば、それぞれの部門で作成したAの書類とBの書類を、まとめてCの部門へ引き継ぐ場合、まとめるのはCの部門なのか、それともAかBのどちらかでまとめるかによって後工程が異なってきます。プロセスが曖昧で未完全になっていないか今一度確認してみましょう。
余計なコストが発生していないか
業務フローには、「ANDの理論」と「ORの理論」があります。似たようなプロセスでも、ANDとORが決まっているものとそうでないものとでは、後工程の業務範囲、責任範囲が異なってきます。ここで大切なのは、後工程において停滞が発生していないかの確認です。
前述のA、B、Cで考えた場合、AとBの書類の取りまとめをCで行うことになると、Cで両方の書類が揃わないと作業を行うことができません。特にこれが経理の売上に関することであれば、揃うまで売上計上ができず業務が停滞し、余計なコストが発生することがあります。これをAかBで取りまとめを行うことによって、Cは円滑に業務を行うことが可能になります。余計なコストを防ぐためにも、未完全なプロセスを後工程にまわさないことが大切です。
責任と権限範囲の確認
似たような作業で、部門や業務でフローが異なっていないかの確認も必要です。
例えば請求書の作成において、ある部門では作成後チェックの工程を経てから後工程にまわすのに対し、もう一方の部門では作成後すぐに後工程にまわすようなことが想定されます。これは意思決定はどこでしているのか、また責任や権限があるのかにも関わってきます。それぞれの作業において責任や権限の確認は、現状の業務の把握にも繋がり、必要に応じて改善していくことも大切です。
時間がかかる要因
時間がかかる要因は、大きく4つの原因が考えられます。
まずは業務プロセスが複雑で、関連している部門が多いため工程が長いことです。
次にあげられるのが業務量が多い理由から、やり直しが多く修正作業が発生しています。
また手作業が多く作業自体に時間がかかり、スキル・知識・経験が乏しいこともあげられます。それ以外にも、そもそもの業務プロセスが正しくないというのも原因の一つです。これらを改善していくには「時間がかかるプロセス」と「時間がかかる要因」を分けて考えていきましょう。
業務フローを作成することで、複雑化している業務プロセスの見直しや正しいプロセスの認識ができ、IT化すれば作業にかかっている時間を削減できます。業務プロセスを分解し、要因を明確にしながら改善していくことが大切です。
効率化のためにできること
作業を効率化するためには、業務フローを作成するにあたり運用方法を見直すことが大切です。業務フローを作成することで、現状の問題点や改善点が自ずと見えてきます。
では、どのような観点で見直しを行っていくか見ていきましょう。
「紙」による運用の見直し
契約書や申請書など、各種書類を紙ベースで行っている業務は多いのではないでしょうか。
紙ベースによる作業は、印刷や押印などが必要なことが多く、送付が必要な書類については封書、郵送などの作業があります。この工程だけで、紙やインク、封筒などの消耗品のコストや郵送費用がかかり、押印や封書作業の手間や時間が発生します。
そのため、現在ではシステム導入によるペーパーレス化を進める企業は少なくありません。
また国が推進する働き方改革でもペーパーレス化は盛り込まれており、従来の紙ベースからシステム化する法整備が進められています。現在は電子帳簿保存法、電子著名法、IT書面一括法、e文書法が施行され、法律に基づいたフロー作成が必要です。
外部サービスやツールの使用を検討する
ペーパーレス化は、外部で行っているサービスを利用したりツールを活用しましょう。
契約書についてはWeb上で締結できるサービス、経費精算などの申請書や稟議書などをデータ化し保管できるサービス、情報共有が可能なツール、会計システムなど多くのサービスやツールがあります。
またシステム化をすることにより、経費精算システムから会計システムにデータを取り込んで使用するなど、システム間での作業が可能になるため効率化が図れます。
外部サービスやツールを利用するメリットは、セキュリティ対策がすでに行われていること、環境設定や閲覧制限など最初から欲しい環境が整っていることです。
自社独自のシステム開発も可能ですが、システム開発はコストが高く時間を要するため、すでにあるサービスやツールを使用するところから検討すると良いでしょう。
キャッシュレス・IT化を進める
資金決済業務は、実際の資金移動が伴うことからミスが許されない業務です。現在「現金」で行っている資金決済は、キャッシュレス決済などのIT化を進めることでミスの事前防止や時間短縮などメリットが多くあります。特に経費精算業務において、小口現金や立替金の精算方法を振込にしたり、電子マネーのキャッシュレス決済を行うことで交通費の履歴や精算履歴がデータ化が可能です。それ以外にも法人のクレジットカードを作成することで、現金のやり取りをなくすこともできます。現金管理のIT化は業務負荷の削減になり、企業の生産性向上に繋がっていくのです。
月次作業のタイミングを見直す
ペーパーレス化、IT化を進めるにあたり、現在行っている業務の月次作業の見直しも行っていきましょう。例えば、経費精算をIT化することで、小口現金や立替金を振込に変更することから、申請の締日や振込日の設定が必要です。
全体の業務が、誰にとっても無駄や無理がないよう、余裕をもったスケジュールを見直すことが大切です。また月次作業を見直すことで、新しい業務やプロジェクトを増やす余力が生まれます。
経理のアウトソーシング
経理業務は、会社全体に関わる管理業務だけでなく、会計業務、経費精算など多くの業務があります。それぞれの業務において、業務フローを見直し、IT化を進めることによって業務の効率化を図ることができますが、すべての業務を一度に行うには時間とコストを要します。
その対策として有効的な手段は、アウトソーシングサービスを活用することです。アウトソーシングサービスは、業務フローや運用ルールを見直すサービスや経理業務の一括代行、一部の業務のみを委託するサービスなどがあります。
外注のメリットは、業務フローを第三者の目で見ることにより問題点や改善点が発見できること、経理業務においては経理のIT知識をすでに持っており、経理業務にも詳しい人材を備えていることが挙げられます。
自社にあったサービスを活用し、業務の効率化をスムーズに行っていくことが得策でしょう。
まとめ
働き方改革で生産性向上が求められる中、業務の効率化は企業にとって大きな課題です。作業の効率化は、業務フローを作成し活用することで、手間や時間が省けるだけでなく、スムーズな運営が可能になります。特に経理業務は全部門と関係があるため、業務範囲や責任範囲を明確にする必要があります。業務フローの作成は、アウトソーシングサービスを活用して手間と時間を省いていきましょう。
業務フロー作成に関することだけでなく、経理業務の一括代行サービスや、業務の一部を委託することにより、業務フローの複雑化を改善することもできます。
自社にあった外注先を選定し、円滑な業務フロー作成を目指しましょう。
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