テレワークの導入が増加し、非対面では難しいと思われていた接客業までもがリモートでの対応を可能にしています。過去、壁となっていた課題は、ITの進化やAIといった人工知能によってクリアされ、今では在宅コールセンターが増加傾向にあるでしょう。
しかし、テレワーク導入における費用や応対品質の確保、労務・勤怠管理に頭を抱える企業も少なくありません。
パンデミックによってニューノーマルの時代を迎えた現在では、そのさまざまな課題を新たなシステムやビジネスツール、外注(BPO)によって解決へと導いています。
今回は、在宅コールセンターの現状と在宅化によって得られる効果、さらに導入における注意点や課題について紹介しましょう。
在宅コールセンター導入で期待できる効果
ニューノーマル時代によって、多くの企業でテレワークを導入するようになりました。在宅勤務が増加する背景には、企業側だけでなく従業員側にもメリットが多いことがあげられます。では、どのようなメリットがあるのでしょうか。在宅コールセンターを導入することで期待できる効果について、それぞれの視点で見てみましょう。
企業側からみた導入効果
■多角的なコスト削減への期待
これまでのコールセンターは、専用のオフィスを設けてセンター運営を行なうことが主流でした。しかし、在宅勤務になることで、広々とした専用施設は不要となるでしょう。
また、PCや電話機など使用する回線数に合わせて用意する必要があり、コールセンターを構築する際には膨大なコストを要していました。インターネットが普及した現在ではPCを所有している人も多く、在宅コールセンターの場合、オペレーター個人のPCを使用し業務を行なうことも可能でしょう。
さらに、柔軟な働き方はさまざまな雇用形態を実現します。これより、人材コストや採用コストを削減することも可能となります。
■人員の適正配置と離職率の低下
コール業務は繁忙期や閑散期、時間帯などによって入電数が大きく変動します。
始業直後や広告がでた瞬間などに入電数が上昇したり、24時間対応を行うセンターでは、深夜から朝方にかけての入電数が落ちることもあるでしょう。カスタマーサポートの場合では、手続きや申請などの時期や締切りの状況によって入電数が上昇し、反対に、時期が過ぎると受電件数は一気に低下します。在宅コールセンターは、柔軟な働き方によって人員の確保や調整ができるため、状況に合わせた人員調整が可能となるでしょう。
また、出勤する必要がなく、国内外と場所を問わず勤務が可能なため、離職率の低下にも繋がっています。
■BCP対策
BCP(事業継続計画)は、災害やパンデミックといった緊急事態が発生した際、企業への損害を最小限に抑え、事業継続や復旧を図るための計画、行動指針です。
一つのオフィスで管理運営をしているコールセンターでは、災害などが発生した場合、運用が完全にストップしてしまう恐れがあります。またパンデミックが起きた場合には、クラスターの発生などの不安が高まるでしょう。
在宅コールセンターは、こういった従業員への負荷を軽減することができます。自然災害が発生した場合には、全国的に幅広くオペレーターが点在していることで、大きな影響を受けず勤務可能な人員を確保することが可能になるでしょう。
このように、在宅コールセンターは、BCP対策としての強みも持っています。
従業員側
■子育てや家事との両立
女性の社会進出が進むと言われる現代においても、企業に求められる時間を確保することが困難など、さまざまな理由から多く女性が結婚や妊娠、出産といったライフイベントをきっかけに離職せざるを得ない状況があります。
在宅コールセンターは、子育てや家事の合間に仕事をすることが可能です。それによって、退職しか選択肢が無かった場合でも、在宅勤務という柔軟な新しい働き方によって、キャリアの継続が可能となるでしょう。
■時間や場所を選ばない柔軟な働き方
在宅勤務は通勤を必要としないため、これまで必要だった時間をカットし移動時間も効率よく活用することができます。
新たに確保した時間は、家事や育児をしても、仕事に充ててもどのように使うかは自由です。また、住む場所にも制限がないため、家族が転勤になったとしても仕事の継続が可能になります。
さらに、パンデミックによって家族の生活スタイルが急に変わったとしても、安心して働くことができるのも魅力です。
■効率よく高収入を目指せる
オフィス勤務の場合、雇用形態によって時給などといった時間の概念を持った働き方がほとんどでしょう。しかし、在宅コールセンターの多くは「成果報酬型」を取り入れていることが多く、これにより効率よく高収入を目指すことが可能です。
家事や育児を両立させ、効率よく仕事をすることで働き手にとって報酬の価値が高まる傾向にあります。これまでのスキルやキャリアを活かすことができれば、隙間時間を使って効率よく稼ぐことができるでしょう。
また、現在では、副業として在宅コール業務を行うオペレーターも増えています。
導入時の注意点
では、企業が在宅コールセンターを導入する場合、どのような点に注意が必要なのでしょうか。環境や業務フローについて、くわしく見てみましょう。
安全な環境をつくる
在宅コールセンターは、自宅などオフィス以外の環境で業務を行います。そのためセキュリティ対策が非常に重要になるでしょう。顧客応対には、個人情報を取り扱うことも少なくありません。顧客情報にアクセスする際や、会話からの情報漏えいには十分注意が必要です。システムのセキュリティ対策はもちろん、オペレーターに対する情報セキュリティ教育においても、十分な研修やルールの設定を行い、マニュアルによる浸透を徹底しましょう。
また、業務を進めるため、必要となる機能を備えたシステム導入も重要です。自社のサービスはもちろんのこと、顧客応対のクオリティやフローなどにマッチしているか、さらに費用対効果なども確認し、導入するシステムを検討しましょう。
安心して働ける方法を考える
安全な環境の構築はもちろんですが、実際に働くオペレーターが安心して働ける仕組みを考えることも重要です。
オフィス勤務と違い、在宅コール業務はその場で誰かに対面で助けを求めることはできません。そのため、十分な研修やフォロー、教育によって安心して業務を遂行できるスキルや方法を共有していく必要があるでしょう。業務を可視化し、トークスクリプトや対応ルールを設定、マニュアルを作成するなどオペレーターによるバラつきや判断の迷いが起きない様にしていくことが大切です。
また、勤怠管理や評価などのマネジメントも重要になります。
超過勤務になっていないかの管理体制や、オフィス勤務のように働く姿が見えていなくてもしっかりと評価を行う方法を事前に決定しておくことがポイントとなるでしょう。
応対品質の管理がカギ
会社の顔となり得るコールセンター業務は、重要な仕事です。
一定の応対品質を保つためには、顧客情報へのアクセススピードや在宅オペレーターと会社との連携が大きなポイントになり、応対品質の管理を徹底することで、顧客離れを抑制することが期待できます。
また、連携やコミュニケーションがスムーズであれば、在宅オペレーターやオフィスワーカーも、互いに安心して働くことができるでしょう。
運用課題①費用面
では、実際に在宅コール業務を行ううえで、課題となりやすい費用面についてを考えてみましょう。
コストを抑えたい
これまでコールセンターを運用してきた企業にとっては、在宅コール業務を行う際に必要となるコストは、できるだけ抑えたいものです。
日々の業務でコストに直結するものとしては、問い合わせ件数の増加やオペレーターの生産性低下などがあげられます。生産性が低下し通話時間が長くなることで通話料が増加する、また取りこぼす件数が増えることで売上が大きく変わっていくでしょう。
特に専門性の高いオペレーションが求められる場合などでは、オペレーターの負担が大きくなるため離職率上昇が考えられます。さらに、生産性が上がらない場合、受電数を増やすことを目的にオペレーターの増員も必要になってくるでしょう。
AIやチャットボットといった技術を活用
コールセンター運用は、人工知能により自動で会話を行うプログラムを用いたチャットボットや、IVR(自動音声)を用いて業務を自動化し、効率化を実現することができます。インターネットが普及した現代において、顧客応対は電話による対応だけがベストな方法ではありません。チャットによって解決する内容であれば、オペレーションが不要となりコストカットに繋がります。また、IVRの活用によって、自動音声で担当部署へスムーズに繋ぐことができるようになるでしょう。
音声認識技術で効果的なVOC収集
VOC(顧客の声)は、企業戦略において顧客ニーズを理解することができるとても重要な情報です。VOCは、音声認識技術を用いることでより効率よく収集することができます。コールセンターには、日々多くのお客様の声が寄せられるため、VOCを効率よく収集し活用していくことが大切です。
外注(BPO)で効果的な設備・人材管理を
コールセンターの在宅化には、外注(BPO)を活用することもおすすめです。BPO活用のメリットとしては、すでに必要となる設備やシステムを熟知している点でしょう。自社が求めるサービスに合った設備やシステムを活用し、スムーズかつスピーディーなコールセンター運用が可能になります。
また、人材の採用や雇用、研修や教育においても任せることができるため、コストの削減が実現できるでしょう。さらに、スキルを持った人材を提供してくれることで、クオリティアップも期待できます。
運用課題②労務管理面
在宅勤務になることで、どうしても不明瞭になりやすいのが労務管理です。オペレーターのモチベーションに直結する重要な課題といえます。
在宅オペレーターの労務・勤怠管理を強化したい
情勢によって、早急なテレワーク導入を余儀なくされた企業の多くは、労務や勤怠の管理について多くの悩みを抱えています。企業側、従業員側と互いに不安や不満を抱えたまま在宅化を行なっている企業も少なくありません。企業の多くは、どのように評価すべきかを迷い、その評価に従業員は不満や不信感を持ってしまっているといったこともあるでしょう。
また、コミュニケーション不足によって、企業側は従業員の働きや企業への貢献度が見えにくくなる傾向があります。従業員も孤独感を感じやすくなることで、モチベーションの低下に繋がる恐れがあるでしょう。
ITを利用した社内環境やマネジメントの改善
2020年のパンデミックによって、世界的に働き方は大きく変化し、それによってITを活用したさまざまなビジネスツールや便利なシステムが展開されるようになりました。
離れた場所でもそういったITツールやシステムを用いることで、リアルタイムな情報共有やスムーズなデータのやり取りが可能になります。
単なるコミュニケーションツールだけでなく、スケジュールやタスクの管理、勤怠管理など、従業員の働き方を見やすくすることもできます。
さらに、モチベーションの状態や悩みの発見がしやすくなることで、必要なタイミングでのフォローや教育的サポートも可能となるでしょう。
適切なシステムを導入する
ITの進歩によって、ビジネスシーンを効率よく支えてくれるさまざまなツールやシステムが多く展開されています。
コールセンター業務に特化したものから情報共有に必要なもの、勤怠管理や業務環境に関わるシステムや仕組みなど、自社にとって何が必要なのかを精査し導入を検討しましょう。
自社で求めるシステムとは?
コールセンター業務においては、CRM(顧客管理システム)や電話とコンピューターを繋ぎ合わせるCTIなどがあります。また、従来オフィスにあったPBX(構内交換機)をクラウド上で活用することができるクラウドPBXなどを活用する企業も増えています。
また、コミュニケーションに重要な役割を果たすチャットツールやテレビ会議ツール、勤怠管理システムやスケジュール・タスク管理ツールなど、業務クオリティや従業員満足度向上に効果的なツールも多いでしょう。
現在では、さまざまなサービスがパッケージ化され販売、展開されています。無料ツールや体験版の活用による精査を行ない、常にバージョンアップしていくことも重要です。
外注(BPO)も検討を
外注(BPO)の導入を選択することも検討しましょう。
コールセンター業務は、全てを自社で行う必要も全てを外注する必要もありません。
自社の必要に応じ、繁忙期のみといった期間を区切る方法や時間帯のみの依頼、在宅ワーカーのみ外注を活用するといったことも可能です。
また、トークスクリプトの作成や作業フローの構築、業務可視化など、自社の弱い部分を見極めて外注による強化を図っていきましょう。
まとめ
在宅コールセンターは、2020年のパンデミックをきっかけに増加しています。
在宅での勤務は企業側、従業員側ともにさまざまなメリットがあり、社会問題化している人材不足に待ったをかけるとともに、これまで働くことが難しかった人材への雇用の創生に繋がっていると言えるでしょう。
企業もオペレーターも、互いに安心安全なコールセンター運用が行えるよう、導入の課題点を理解し、自社に合った解決策を模索することが重要です。
これからのスムーズな業務運営には、ITの進化によって展開される便利なシステムやツールの活用がポイントになります。また、自社の弱みを外注で強化するなど、今後さらに活性化されるであろう在宅コールセンターを上手に運用していきましょう。
この記事は役に立ちましたか?
ご不明点がございましたら、
以下のフォームにてお気軽にお問合せください!
記事についてのご質問
この記事について、あなたの「もっと知りたい!」にお答えします