経費精算は規模、業種にかかわらず全ての企業に生じる業務です。しかし、利益を生み出すものではないかわりに、手間も時間もかかるいわば厄介な業務のひとつでもあります。従業員全員分の処理や、溜まった申請を一気に処理しなければならない経理担当者は、忙しさゆえに細部まで目を配ることが難しくなってしまいます。
2014年度に中小企業庁が行った調査によると、経理財務担当の人員数は1人が58.2%、次いで2人が17.9%という回答でした。すなわち、ほぼ8割の中小企業において、1人ないし2人の部員のみで経理業務が行われているということになります。人数が増え、取引の規模が大きくなると組織統制のため、社内の基準を定めることが必要になるでしょう。経費精算規定もそのひとつです。
生産性のない経費精算業務にかかる時間を短縮し、経理業務の負荷を軽減するためには、経費精算ルールの制定が欠かせません。
本記事では、中小企業が継続して発展していくために、経理業務フロー見直しを目的として経費精算規定を定める際のポイントと注意点について解説します。
【出典】「中小企業における会計の実態調査事業報告書_中小企業庁」
「経費精算規定」なぜ必要なのか
経費精算のルールを定めると、経費精算の申請者、承認する上長、そしてその申請を受理する経理担当者の全当事者が、共通の認識のもとに精算業務を行うことが可能になります。その結果、経理担当者の負担や不正リスクの削減を期待することができるでしょう。
経理担当者の負担が減る
経費精算のルールがない場合、社員から様々な形式・内容の経費申請が行われる可能性があります。これらの申請が経費として認められるかを判断した上で、内容の精査をするのは、大変な業務です。
経費精算のルールを設定すると、申請者はルールに従い迷いなくスムーズに業務を進められるようになります。それによって、ミスや不備が軽減、差し戻し件数の削減となり経理担当者の余計な負担を減らすことができるのです。業務に関する精神面のストレスが軽減され、経費精算のために行っていた残業時間の削減にも繋がるでしょう。
経費の無駄を省く
会社の利益を確保するためには、無駄な支出はなるべく避けなければなりません。経費精算のルールを定めると、経費そのものを抑制することにもつながります。
・交通費は最短経路で最安経路を利用するよう定める
・タクシーやレンタカーの利用に関して具体的な条件を設ける
・出張時の宿泊費の上限額を設定する
・交際費には上長の事前承認を必要とする
このように、規定をあらかじめ設定しておけば、必要以上に経費の支払いが行われることを、未然に防げるようになるでしょう。
不正を防ぐ
意図したものであるか否かにかかわらず、経費精算における不正は起こりやすく、見逃されがちです。
中小企業経理担当者630名に行った調査データによると、従業員数が50名未満の企業の23%、そして500名以上の企業に関しては49%の経理担当者が不正申請を発見したことがあると回答しています。さらに、「不正申請に対してどのくらい見落としを防げているか?」の問いには、過半数の経理担当者が「見落としてしまっていると思う」と回答しています。
不正な経費申請があった場合、会社は正しく利益を算出することができなくなってしまいます。
また、不正が許されてしまうような雰囲気では、社員のやる気や会社全体のモラルの低下を招きます。経費精算のルールをしっかりと定めて周知徹底することにより、経費の不正ができない仕組みを作ることが重要です。
経費精算規定作成の基本項目
実際に会社の指針を反映した自社の経費精算のルールを作成するにあたって、何を記載すればよいのか、経理業務の効率を上げるという観点からも、規定に盛り込むことが必要な、基本の項目を確認してみましょう。
規定作成の目的と適用範囲
第一に、経費精算規定がどのような目的で作成されたかを簡潔に記載します。
規定内で「社員」と表記する際には、正社員のみを意味するのか、アルバイトや非正規社員が含まれるかについても事前に検討し明示しなければなりません。
なお「出張旅費規程」や「交際費規定」が頻繁に使われるものになる場合は、別規定にすることを検討すると良いでしょう。
経費の基準
業務遂行のために発生する経費とは何か、定義を示すことが必要です。想定される全ての経費を列挙し、標準的な各経費については許容される条件を記載しましょう。
むやみに経費削減を追い求めて切り詰めようとすると、従業員の反発を招いてしまうことも考えられます。十分に検討して部署または役職ごとに会社の実情にあった適切な上限金額を設定し、設定金額を超えるときは事前に稟議を通すよう規定することも得策です。
期限の設定
対象となる経費の発生した日から申請までの期限を定めます。経費精算はなるべく早く行うのが理想です。時間が経つと、事実確認が困難になるだけでなく、申請者が領収書を紛失してしまうなど、経理担当者の負担にもなりえます。
適切に経費を精算するため、申請期日を明記しましょう。
絶対外せない入れるべき項目
上記で挙げた基本項目の他にも、経費精算規定の中に忘れずに入れるべき項目があります。絶対に外すことができない項目について見てみましょう。
自己決済の禁止
決裁権を持った人が自分の経費を自ら承認すると、空請求や水増し請求などの原因になりかねません。不正の温床となりえる状況は元から絶つべきと言えます。決裁権者であっても、自分の申請の場合には同席もしくは上席の決済者の承認を受ける必要があるなどの規定を盛り込み、自己決済を禁止するのが安心です。
領収書の取扱い
これまでは、経費精算には原則として領収書の現物が必要だったため、申請時には領収書を申請書に添付して提出し、紙の原本を7年間ものあいだ保管しなければなりませんでした。
しかし、近年の法改正や規制緩和により、ペーパーレス化が推進され、2020年10月1日より施行された改正電子帳簿保存法では、期限内に領収書をデジタルデータ化しタイムスタンプを押したものに加え、キャッシュレス決済の際に受領できるデジタルデータでの利用明細(現行税込3万円未満のものに限る)を、紙の領収書の代わりとすることができるようになりました。これにより作業および管理の手間や保管スペースの削減、検索性の向上など様々な効果が期待できます。
電子帳簿保存法で定めた基準を満たすシステム導入の検討を含めて、デジタルデータを利用するかを決定し、会社の方針にあわせ何についてどのような領収書が必要なのか、また領収書が無い場合にはどう対処するのかを説明する必要があります。
例外の禁止
経費精算のルールに限ったことではありませんが、基本的に規定に関する例外対応は認めないようにすることが得策です。正当な理由なく例外を認めてしまうと、ルールが形骸化して尊重されなくなる恐れがあります。一度決めたルールは徹底して守るよう周知するのが安心です。
経費精算規定を変更する際の注意点
ルールは一度制定したらそれで完結ではありません。従業員に経費精算規定を周知徹底し順守してもらうことはもちろん、規定作成後も、適宜変更の要否を見直し、必要に応じて改定しなければなりません。
変更の見直し
規定は不変のものではありません。例えば、法改正、労働条件の見直しなどの理由により、規定内容が現実に即するものでなくなってしまった場合には、条文を削除、追加または修正する必要があります。特に会計制度の改正は、年々加速度的に増加しており、先にも触れた電子帳簿保存法改正によって、経費精算の在り方は大きく変わることとなりました。社内で十分に検討し、変更箇所を見極めることが重要です。
改定履歴の記録
規定の変更を行う場合には、改定の履歴も記録します。というのも、もし過去の問題が明らかになってこれに対処する場合、その問題が発生した当時の規定に沿って解決する必要があるからです。
附則に改定の日付と変更内容の概要を記載すると、後で見直す際にもわかりやすいでしょう。また、変更箇所についての周知も忘れずに行います。
経費精算ならMamasan&Companyにお任せ!
経理業務のフロー見直しには、経費精算規定を作成することが効果的です。さらなる効率化を望む場合には、経費精算ルールの制定に加えて電子帳簿保存法に対応した経費精算システムを導入し経費精算の自動化を進められると、経理の負担が劇的に削減されるだけでなく、リモートワークの促進にもなります。
ただしこの場合、システムの導入や3ヶ月前までの税務署への申請準備、社員教育など別の負担がかかってしまうのは避けられません。
経費精算ルールの設定に加え、経費精算システムを利用したサービスの代行を検討することをおすすめします。
10年以上の実績を誇るMamasan&Company株式会社
Mamasan&Companyは、2008年より給与計算や経理業務などのバックオフィス業務を請け負い10年以上の実績と柔軟なサービスに定評がある企業です。国内外を問わず、多くのリモートワーカーが活躍し、バックオフィス業務のほか、システム開発や採用代行などのBPOサービスを展開しています。
現在は、株式会社ラクスが提供する経費精算システム「楽楽精算」の正規代理店とし、楽楽精算を活用した経費精算業務をトータルで代行するサービスを提供しています。
6,000社が導入する「楽楽精算」
株式会社ラクスが提供する「楽楽精算」は、電子帳簿保存法の法的要件を満たしたシステムとしてJIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)に認証されたクラウド型経費精算システムです。タイムスタンプ付与・検索機能・一括検索機能によって、ペーパーレスな経費精算を実現できます。2020年3月末日現在、累計6,000社が導入しているという数字も納得の人気システムです。
「楽楽精算」とセットで!設定からお任せできる
電子帳簿保存法の要件は複雑で導入できるか不安という中小企業の悩みにも、システムの設定代行を含め、従業員と経理担当者の間に入って面倒な経費精算を全て引き受けてくれるMamasan&Companyがいれば安心です。実際の処理件数に応じた費用請求のため、無駄なコストが発生しないのも魅力のひとつでしょう。既存の会計ソフトやサービスとの連携にも柔軟に応じ、個々の企業に合った効率的な経理業務フローを提案しています。
【参考】「経費精算システムなら「楽楽精算」国内導入数No.1!株式会社ラクス」
まとめ
経理業務のフローを効率化し、限られた人員で上手く対応するために必要なのは、明確な経費精算ルールを定め、煩雑な申請業務を少しでもわかりやすく透明性の高いものにすることが大切です。この精算規定を確実に運用するためには、作成ポイントと注意点に留意し経費精算規定を制定する必要があります。
さらに、ペーパーレス化やシステム導入による業務負担の削減、またBPO企業の活用などを組み合わせ、スピーディーな効率化を目指しましょう。
【関連記事】「面倒な経費精算はアウトソーシング!手間を解消する3つの方法」
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