今テレワークが注目されている背景に、コロナなどの災害対策や、人材確保、労働者のワークライフバランスといった課題があります。
テレワークの導入は、企業に生産性の向上や経費削減、優秀な人材の確保など多くの利益をもたすにもかかわらず、日本における企業のテレワーク導入率はまだ低い水準といっていいでしょう。
中でも注目されているのが在宅勤務です。現在会社などで働いている社員だけでなく、企業への求人応募の際に在宅勤務制度がある会社が重視され、働き手側は多様な働き方を求めるようになりました。
では、在宅勤務導入には、どのような不安があるでしょうか。導入の不安を解消するため、押さえておくべきポイントと成功事例を紹介します。
テレワーク導入率
テレワークとは、ICT(Information and Communication Technology)を活用し、時間や場所の制約を受けない柔軟な働き方のことです。「雇用型」「自営型」に分けられ、雇用型には「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライト勤務」に分けられます。
実際に、テレワークはどれくらいの企業が導入しているか、日本だけでなく世界の動向を見ていきましょう。
日本のテレワーク導入率
総務省の「平成30年通信利用動向調査」によると、日本の企業におけるテレワークの導入率は19.1%、導入予定がある企業は7.2%、合わせて26.3%となっています。
調査開始時の2012年は11.5%に比べ、2倍以上上昇しており、今後も増加していく傾向になるでしょう。
特に、2016年に厚生労働省が発表した「働き方改革」では、テレワークは切り札とされ、様々な取り組みが進められています。
また、テレワーク導入がなかなか進まない中小企業に対しては助成金を行うなど、積極的に普及促進が行われています。
海外のテレワーク導入率
海外の企業におけるテレワーク導入率はどの程度でしょうか。アメリカが85%と突出しており、英国38.2%、ドイツ21.9%、フランス14.0%と続きます。
海外でもワークライフバランスの意識が高まっており、柔軟な働き方やその多様性はこれからの時代に必要だと認識されているようです。
アメリカの場合
企業で85%という高い導入率を誇るアメリカでは、どのくらい人口がテレワークをしているのでしょうか。調査によると、テレワーク人口は全就業者の20%にのぼります。
雇用型のテレワーカー1700万人、自営型1000万人弱という数字です。アメリカでは、数年前に制定された「2010テレワーク強化法」により、テレワーカーの後押しをしている状況が浮き彫りとなっています。
なぜ?テレワークを導入すべき理由とは
テレワークを導入すべき理由は沢山あります。コスト削減や生産性の向上のほか、社員の満足度を向上させることも期待できますし、通勤が難しい優秀な人材を確保することも可能になります。
コスト削減
テレワーク導入によって様々なコストの削減が可能ですが、特に大幅な削減が期待できるのはオフィスコストでしょう。
出社する人数を減らせば大きなオフィスを維持する必要がなくなり、移転費用こそかかるものの、月々の賃貸料、管理費、電気代などの共益費、印刷用紙などの事務用品費など、様々なオフィスコストを抑えることが可能でしょう。また、社員に払う通勤費の削減も可能となります。
生産性の向上
ICTと呼ばれる情報通信技術を活用することで、いつでもどこでも業務を行なえます。今まで通勤に割いていた時間やすきま時間に、効率よく業務を割り振れますし、オンライン会議は本当に必要な人員だけになり、余分な雑談を減らせ内容の濃い議論が可能となるでしょう。さらに、来客や電話対応などで作業を中断する必要もなくなり、落ち着いて業務に当たれるため、テレワーク導入企業の労働生産性は、未導入の企業に比べ1.6倍になると言われています。
優秀な人材の採用・離職防止
テレワーク導入によって、社員のワークライフバランスは向上し満足度が高まるとともに、育児や介護、自身の病気などによる離職を防ぐことが期待できるでしょう。
人材の募集要項に「テレワーク制度あり」と記載することで応募者が増える傾向にあるなど、企業規模に関係せず見受けられ、応募者のテレワークに対する関心の高さが浮き彫りになっています。
在宅勤務への不安を無くす3つポイント
テレワークを導入する「メリット」は理解しても、本格的に制度を導入するとなると不安が残るものです。それぞれが違う環境での勤務になるため、様々な問題が出てくるのも確かです。導入企業と在宅勤務者の双方にとって不安なく取り組めるよう、導入企業が行っている対策をご紹介します。
勤怠管理をスムーズに行う方法
在宅勤務での勤務時間は、各労働者の状況によって大きく異なります。
Webアプリケーションを活用し、中抜けの時間などの細やかなスケジュール管理や共有の仕組みが整えば、スムーズに勤怠管理を行えるようになります。パソコンに限定せず、スマートフォンやタブレット端末からも管理を行えるようにすることで、より柔軟に勤怠管理が行なえるようになるでしょう。
コミュニケーションツールの活用について
在宅勤務を導入すると、社員同士の綿密な情報共有が難しく、非効率になることを懸念する企業担当者やコミュニケーション不足に悩む在宅勤務者も少なくありません。
オンライン上での円滑な情報共有やコミュニケーションが、テレワークを行なう上での大きな課題となるでしょう。
ICTを活用し会議へリモート参加や、Web会議システムを活用し常時接続しておくことでお互いの姿を確認でき、遠隔地にいながら空間を共有することも可能です。
Googleドキュメントを活用すれば、複数の社員がリアルタイムで同じドキュメントを共有できるようになります。会議の参加者全員が、同じ議事録やアジェンダを見ながらオンラインで参加することもできます。
評価の方法について
在宅勤務を導入しない理由として、約3割の企業担当者が「業績評価が難しいため」と答えています。在宅勤務に対する評価はどうしても成果主義に偏りがちで、プロセスに対する評価が行ないにくいためです。人材の育成という観点からも、期初・期中・期末と個別面談を行うなどの対策を行ない、成果物だけに頼らない業績評価を行なう必要があります。
上司と部下が定期的に面談を行うことにより、社員が「会社への貢献度」を確認できる機会を得て、より一層の能力開発と向上が期待できるでしょう。
在宅勤務ができるのは限られた職業だけなのか?
在宅勤務を導入できる職種は、Web専門職種が多いと思われがちですが、システムなどの環境を整えることで、Web専門職以外の職種でも在宅勤務が可能になります。
具体的に、どのような職種で在宅勤務が導入されているか見ていきましょう。
在宅勤務がしやすい職種
システムエンジニアやプログラマーなどのWeb専門職種、ライターやクリエイティブ関連の職種は、早くから在宅勤務が導入されてきました。雇用形態も様々で、会社と雇用契約を結び社員として在宅で働く人もいれば、フリーランスとして働く人も多いのが特徴です。
実は在宅勤務可能な職種
民間では情報通信業、金融業、製造業など多くの業種において在宅勤務が既に導入されています。経理や人事などの事務職は比較的在宅勤務が行ないやすい職種になりますが、そのほかにも、営業、コールセンター、データ入力、お客様サポート、さらには製造現場の管理業務や接客など様々な職種で在宅勤務が可能です。
広がる在宅勤務
特に大企業で在宅勤務の導入が加速しており、従業員が500人以上の大企業では23.6%と非常に高い割合になっています。4社に1社が何らかの在宅勤務制度を導入している計算になります。政府の奨励の後押しによって、今後は中小企業でも在宅勤務を導入する企業が増加していくでしょう。
テレワークを取り入れた事例①
製造業の「味の素」は、約2000名がテレワークを実施しています。味の素は、2008年から社員のワークライフバランスの向上に取り組み、2017年4月よりテレワーク導入を行っています。
どこでもオフィス
味の素のテレワークは、利用条件が緩和されている点が特徴的です。テレワークは「どこでもオフィス」と名づけられ、自宅やサテライトオフィス、他にセキュリティが確保され集中して勤務できる場所と選択できます。これにより、ほぼ全社員が最大週4日まで、終日から短時間まで、時間と場所を有効に活用して柔軟に働けるようになっています。
効率的なWeb会議実施への対策
テレワーク時のWeb会議を効率良く実施するため、ヘッドセットを全従業員に配布・携帯させています。またWeb会議を行う際に使用するSkypeなどのツールの使い方に関する勉強会を開催するなど、活用方法についての理解を促進させる機会を持ち社員へのフォローも充実しています。
テレワークを取り入れた事例②
日本航空株式会社は、2015年にテレワークを制度化しています。制度導入後もトライアルを繰り返し、現在では自宅以外での業務を認めるなど、確実にワークスタイル改革を進めています。
導入が難しい部署で開始
テレワークを浸透させるため日本航空が取った施策は、最も残業時間の長い部署への先行導入です。
その方法も画期的で、デスクトップPCと固定電話を撤去し、ノートPCからVDI(仮想デスクトップ環境)経由で社内システムにアクセスする改革を行っています。またペーパーレス化やフリーアドレスを進め、該当の部署の残業時間の大幅な削減に成功しています。
在宅勤務のツール
在宅勤務のツールとして、日本航空ではノートパソコン、スマートフォン、VDIを「3点セット」と呼び運用しています。また、チャットやビデオ会議システムも導入し、離れた場所にいてもスムーズにコミュニケーションできるよう環境が整備されているのです。
制度浸透への努力
気軽にテレワーク制度を利用できるようにするため、申請期間の短縮化を段階的に行っています。もともとは2週間必要だった書面での申請が、現在では前日までのメール申請も可能となり利便性が向上しています。
また1日単位でのテレワークを半日取得や分割取得も可能にするなど、使い勝手の良い制度にするため、何度も見直しを重ねている点も特徴的です。
まとめ
近年のテレワークという制度は、本格的に導入する企業が増加しており、導入企業の労働生産性は未導入の企業と比較し1.6倍になるとの報告からもその有用性は確かなものでしょう。
一方、テレワークに不安を抱える企業も多く、導入への道のりには様々な課題が内包されています。そのような中、テレワーク運用に成功している導入企業の例からは、テレワークを定着させるための企業努力やノウハウ、そして改革への強いリーダーシップが見て取れます。
具体的な成功事例を参考に、テレワークに対する不安を払拭し、在宅勤務導入へ一歩前進しましょう。
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