昨今は人手不足が叫ばれていますが、実感はあるでしょうか。
厚生労働省のデータによると、2019年4月時点の日本の有効求人倍率は1.63倍でした。 更に数値の推移を見てみると、ここ近年の有効求人倍率はバブルの頃を越え、日本は現在超売り手市場であることがわかります。
しかし裏を返せば、それほど人手不足がじわじわと深刻化してきているということです。 ところが状況はこれだけではおさまりません。少子高齢化に加え、人口減少による生産年齢人口も下降線となっていますから、今後も更に人手不足は加速していくことが解っています。 これからの時代、企業にとって労働力の確保が大きな課題となっていくことは明白です。 今後も続く人手不足に備えて、また、少ない人員の生産性を高めるために一体何ができるのか。 この問題に対し、あなたの会社はもう対策に乗り出しているでしょうか?
今からでも間に合います。これからできることをピックアップしていきましょう。
(参照:厚生労働省 一般職業職業紹介状況(平成31年4月分)について)
人手不足の現状
人手不足とよく耳にしても、実感として程度が解っていない方もいるのではないでしょうか。 では、現状どのくらいの人手不足なのか、実際に数値で確認してみましょう。
生産年齢人口の推移
15~64歳までの働き手の人数のことを「生産年齢人口」と言います。 経産省によると、生産年齢人口が2019年は7545万人なのに対して、2030年は6773万人、更に2050年には5001万人まで減少する、との予測が出ています。 この数値だけでも、今後大変な勢いで生産年齢人口が減っていくことが解ります。
アンケートによる調査
エン・ジャパンのアンケート調査によると、「人手不足の部署がある」など、企業の実に84%が人手不足を実感しているという結果になったそうです。 実際に働き手が減り、企業もそれをひしひしと実感しているということが伺えますね。
(参照:エン・ジャパン 企業の人手不足実態調査)
人手不足倒産の推移
実際に人手不足が要因で倒産する企業も増えています。 東京商工リサーチによると、2018年(1-12月)の「人手不足」関連倒産は387件。 2013年に調査を開始以来、これまで最多だった2015年の340件を上回って、最多記録を更新しました。 (参照:東京商工リサーチ)
このように、全体的な人手不足であることは数値から見ても明らかです。
今後はさらに加速し、強く実感していくことでしょう。
人手不足に陥る原因
では、ここまでの人手不足に陥ったのは、一体どうしてなのでしょう。
生産年齢人口の減少
厚生労働省の人口動態調査(2018年)の結果を見てみると、日本の人口は8年連続で減少しています。 (参照:日本経済新聞) これは、第二次ベビーブームをピークとして出生率がどんどん低下の一途を辿り、少子高齢化が進んだためです。 その結果、生産年齢人口も1995年以降年々減り続け、今後も減っていくことが解っています。
有効求人倍率の上昇と大企業志向
現在売り手市場と言われるように、有効求人倍率は上がっています。 ところが、求職者に大企業志向が強くなってきているため、特定の企業に求職者が殺到し、逆に中小企業には人が集まりにくい傾向があります。 求人倍率が上がって、求職者が企業を選べるようになったことも背景にあるでしょう。
労働条件の不整備
現在は終身雇用の考えも弱くなってきているため、求職者や転職者もより良い条件の企業へと簡単に移ってしまいます。 ここでもやはり、給与や環境等の労働条件を整えるほどの余裕がない中小企業は苦戦を強いられるのです。
人手不足に悩む業界
人手不足は業界によっても偏りがあります。
現在、特に人手不足と言われている業界を見てみましょう。
放送業界
華やかに見える放送業界ですが、拘束時間が長い、仕事が効率化されていない等の理由から近年希望者人数は下降線。 大幅な人手不足に陥っています。
運輸・倉庫
インターネットショッピングが普及し、近年市場が急速に拡大した運輸・倉庫業界です。 市場拡大に対して人員の確保が間に合わず、更に、再配達問題や仕事のきつさもあって人手不足が続いていました。業界全体で環境改善の方向性で動いています。
情報サービス
IT業界など、こちらも市場がどんどん大きくなっている業界です。
しかしその反面、エンジニアは慢性的に不足しています。
理由として、最新の技術についていけない、労働時間や内容に対して賃金が見合わないといった声も上がっています。
その他
上記の3つの業界は、業界内の実に70%以上が人手不足に陥っているそうです。
このあとにも「建設」「飲食店」「家電・情報機器小売」業界が60%以上と続き、特に「飲食店」は急速に人手不足の順位を上げています。 今後どの業界が上がって来るか、また、問題点を改善して順位を下げられるか。順位を下げた業界には改善と対策のヒントがあるはずですから、しっかり注目していきたいですね。
人手不足への対策
ではこれからますます加速する人手不足を、我々は一体どのように乗り切れば良いのでしょうか。 その具体的対策をいくつか上げてみましょう。
多様な人物の採用に目を向ける
今まで働き盛りの男性や新卒の方にばかり目がいきがちでしたが、まずはその概念を切り替えてみましょう。 今正社員としてフルタイムで働くことのできない層の中にも、素晴らしい経験やスキルを持った人材が埋もれています。 今後は女性や高齢者、外国人などにも視野を広げ、条件にこだわらず良い人材をどんどん発掘していくと良いでしょう。
労働環境や働き方の整備
幅広い人材を採用するのであれば、女性や高齢者などにとっても働きやすい環境整備が必要です。 育休や急な休みの取りやすさをはじめ、時短勤務や在宅勤務など働き方も一人一人にあわせて柔軟に対応していけるようにしていくと人が集まりやすくなります。
給与や福利厚生の見直し
中小企業が陥りがちなのが「安い給与で高い戦力を求める」という求人のやり方です。これでは求人はいつまでも埋まらず、ますます良い人材が離れてしまいます。 「自分たちはこうだったから」といった考えを捨て、給与や福利厚生をできるだけ充実できるよう、見直しをしていきましょう。 社員の希望を吸い上げつつ、会社も多様性に対応していくことが大事です。 そうすれば社員の定着にも繋がり「働きたくても状況的に働けなかった」といった層からも労働力を獲得することが可能になることでしょう。
生産性向上の方法
熾烈な競争を勝ち抜くためには、人材の確保だけでなく、今後は生産性を向上させることも考えなければいけません。 限られた人材を有効に活用する。そのためには、どのような方法があるでしょうか。
業務の見直し
まずすべてのスタートはここです。業務に、簡略化できることや無駄はないですか? 実際に業務を棚卸してみると「この部分はもうやる必要はない」「これは無くしても良いのでは?」という事例は意外に多くあるものです。 無意味に踏襲されてきた慣習や無駄は省き、本当に必要な業務のフローを洗い出しましょう。
ITの導入
上記のステップが完了したら、できる対策も見えてきます。 まずその1つがITの導入です。 例えばメールシステムやペーパーレス化、経費精算や給与計算など、専用ソフトやクラウドを活用すればかなりの効率化が望めます。
業務委託の活用
業務委託も1つの手段として有効です。
毎月のルーティンや、人手が足りない業務については、外部へ委託することもうまく活用しましょう。 経理や営業サポートをはじめ、秘書・採用・給与計算など業務委託も様々な内容に対応しています。煩雑な業務は外部にお任せして、社内の人材はコア業務に集中するというやり方も、これから増えてくる働き方の一つでしょう。
人材への投資
業務委託やIT化で社員の負担を軽くした上で、社内の人材に対しては、しっかり投資をして育成を行います。 基礎能力を底上げし、各個人に合ったスキルを磨くことで、一人一人の生産性を大幅に上げていくことができるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
これから人手不足は更に加速し、特に中小企業にとってはより厳しい状況となっていくでしょう。 しかし、上記で説明したように「人手不足への対策」と「生産性の向上」、これらを今から地道に行っていくことで、良い人材を集めて定着させる基盤を作ることができるはずです。 今が丁度過渡期のタイミングであることは間違いないでしょう。 あなたの会社がもしも人手不足対策を行っていないとしても、まだ間に合います。 ぜひ今から取り組んでみてください。
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