記帳や決算業務などの会計業務に関する相談は、公認会計士でも税理士でも対応可能です。しかし、それぞれ得意分野が異なるため、会計の相談を考えている際は、公認会計士や税理士のみに許可された「独占業務」や各々のメイン業務について理解し、相談目的に合わせた有資格者を選ぶ必要があります。
公認会計士と税理士の違いや特性について理解を深め、会計の相談内容にあわせた適切な相談先の選び方を紹介します。
公認会計士と税理士の違い
公認会計士と税理士は、どちらも会計に関する業務を行う専門家です。会計の中でも両者は専門分野が異なり、公認会計士は「財務諸表監査」に、税理士は「税務」に特化しています。公認会計士と税理士の特徴や資格取得方法の違いについて見ていきましょう。
公認会計士と税理士
二つとも会計系資格の最高峰と言われており、資格取得の難易度はトップクラスです。どちらに優位性があるかは、試験の制度や資格によって得られる独占業務の性質が異なるため単純な比較はできません。
両資格とも試験の難易度が高いため、最低2,000時間以上の学習時間が必要とされており、資格取得には時間やコストがかかります。また、どちらも実質的に競争試験の形をとっているため、会計に関する知識だけでなく、同じ受験者よりも良い点数を取ることが求めらます。
ちなみに、2018年度における有資格者は、公認会計士は約3,700人、税理士は約7,800人となっており、公認会計士は税理士の半数ほどです。
受験資格の違い
公認会計士試験は、試験自体には受験資格がないため誰でも受験が可能です。一方、税理士試験は、学識または資格、職歴による受験資格が必要になります。具体的には、大学や短大の卒業者で特定の単位履修がすんでいること、または日商簿記検定1級合格者であることや会計事務の実務経験が2年以上あることなどが必要です。詳しい、受験資格は国税庁のHPを参考にしましょう。
資格登録要件の違い
公認会計士も税理士も、試験に合格するだけでは資格保持者として働くことができず、資格登録を行い、初めて公認会計士や税理士として働くことが可能となります。
公認会計士の資格登録要件は、業務補助2年、実務実習3年、終了考査(実務補習所の卒業試験)などがあり、受験資格がない代わりに、資格登録要件は厳しいものとなっています。
一方、税理士は実務経験2年のみとなっており、こちらは試験合格の前後を問いません。試験も、段階を踏んで受けることが可能なため、税理士事務所で実務を学びながら合格を目指す人もいます。どちらの資格も有資格者として働くためには、試験の合格だけでなく、特定の講習受講や実務経験などが必要されるトップクラスの資格です。
試験免除の条件の違い
公認会計士と税理士はともに会計系資格であるため、両方の資格を保持している人も少なくありません。試験内容が重複する部分もあるため、有資格者には一部または全ての試験免除も与えられています。
■公認会計士が税理士の資格を取る場合
税理士登録を行えば、試験を受けることなく税理士資格を得られます。
■税理士が公認会計士の資格を取る場合
公認会計士試験は短答式試験と論文式試験の二つです。税理士の資格を持っていると、企業法・管理会計論・監査論・財務会計論と4科目ある短答式試験の一つである「財務会計論」の試験免除が受けられます。
公認会計士は対応する分野が広く、税務業務への理解もあるため、試験が免除され、税理士の資格を取りやすくなっています。
公認会計士と税理士の業務範囲
公認会計士と税理士はともに会計の専門家であるものの、独占業務が異なるため得意分野が異なります。具体的な、業務範囲の違いを確認してきましょう。
独占業務の違い
公認会計士と税理士は、どちらも会計に関する業務の相談や委託が可能です。同じ会計を預かる資格職であるこの二者の違いは、公認会計士の独占業務が「財務諸表監査」であり、税理士の独占業務が「税務」であるという点です。独占業務とは、有資格者だけが行うことのできる業務を指します。
公認会計士は財務、税理士は税務とメイン業務が異なることを踏まえ、相談内容に応じた有資格者を選ぶことが必要です。
公認会計士の独占業務
公認会計士の独占業務「財務諸表監査」とは、企業が作成した財務諸表の整合性を第三者の立場から監査する業務です。この財務諸表とは、企業が一年間に及ぶ日々の取引きを記録し、いくら利益が出たか、保有資産がどれほどあるかなどの、企業の経営状況をまとめた報告書のことを差します。この財務諸表を見ることで企業の内情が明らかになり、今後の企業のありようや、投資家または銀行にとっての重要な判断材料になります。財務諸表の整合性を証明するには公平な監査が必要になるため、公認会計士の役割は非常に重要です。
税理士の独占業務
税理士の独占業務である「税務」は、財務諸表をベースに税金の申告書類を作成代行したり、税金に関するアドバイスをすることです。税金の申告は自社で行うことも可能ですが、日本の税金制度は非常に複雑かつ流動的なため、ほとんどの企業が税金のプロである税理士と雇用契約を結んでいます。また、小規模の企業に関して言えば、税務に限らず記帳代行や決算業務、財務諸表を作るなど会計に関する業務も包括的にサポートすることもあります。
資格が無くても行える会計業務
「財務諸表監査」や「税務」以外の会計業務は、無資格でも行うことが可能です。具体例を挙げると、会計コンサルティング、記帳代行や相談、決算業務、M&A、企業再生や組織再編の相談、財務デューデリジェンスなどがあり、これらの会計関連業務は資格が無くても請け負うことができます。とはいえ、会計業務は企業の経営計画にも関わる重要な業務も多いため、有資格者に委託する企業が多いでしょう。
お金に関する相談はどちらでもOK
独占業務以外の会計関連業務は資格がなくても行うことができるため、相談自体は公認会計士でも税理士でも対応可能です。どの様な相談ができるのか見ていきましょう。
会計コンサルティング
会計業務効率化のサポートをする業務で、具体的には決算報告書作成の業務フロー改善、効率化に有効なシステムの導入支援や、会計関連の法規制に対するモニタリング対応などが挙げられます。企業が、コストを抑え、より簡単に正確な決算報告書作成を行うための仕組み作りをサポートします。
また、財務諸表や月次試算表などの作成、売上計上のタイミングや仕訳け、支出の按分などの会計処理に関する相談など、会計業務全般でコンサルティングを受けることがが可能です。
経営改善・資金調達の相談
公認会計士や税理士による経営改善の主な流れは、企業の財務状況や金融機関の借入返済状況の把握と分析をし、必要ならば返済条件の変更などの折衝を行いながら、経営改善計画書の策定と実行をします。財務状況の分析などは、専門的な知識が必要になるため、公認会計士や融資を受けている銀行からの支援を受けるパターンが多いでしょう。
財務デューデリジェンス
デューデリジェンスとは、英語の「Due Diligence」のことを指し、「適切な調査」を意味します。具体的な業務は、過去の財務諸表や月次試算表から、その企業の経営成績や財務状況を正確に把握し、財務分析に基づく事業計画の策定を行います。
調査のポイントは、依頼企業と調査者の協議の上で定められ、数百項目にも及ぶポイントが列挙されることが一般的です。大がかりな設備投資や他社の買収など、企業が大きな決断をする際の、リスクの把握やそのリスクに対する責任への対応などをあらかじめ定めるための調査であり、正確さや信頼性の高さが必要となります。相談自体は税理士でも大丈夫ですが、より専門的なアドバイスが必要なら公認会計士に依頼しましょう。
社内業務の委託・依頼
記帳や月次試算表などの日々の経理事務や、従業員の給与計算など会計業務の委託が可能です。会計業務の委託内容として、記帳代行や経費精算、給与計算、売掛金・買掛金の管理、見積書・請求書の発行、銀行入出金管理・振込手配などが挙げられます。これらの業務は資格がなくても行えるため、公認会計士や税理士が直接業務を行うのではなく、自社の社員に指導をお願いしたり、有資格者を保有する代行業者に委託することが多いでしょう。
記帳代行に関する相談はどちらでもOK
会計業務の中でも、日々の対応が必要になる記帳業務は、人材が足りない企業には大きな負担となります。記帳代行を利用することで業務負担の軽減ができ、本来の業務に専念することが可能です。
記帳代行業務は独占業務外
記帳代行自体は独占業務ではないため、公認会計士でも税理士でも、さらには資格が無くても引き受けることは可能です。しかし、法令に沿った対応も必要とされる上、会計の専門家としてのアドバイスが受けられることから、多くの企業は有資格者のいる委託先を選んでいます。
記帳代行を活用するメリット
記帳代行は、企業活動に必要不可欠でありながら、専門的な知識が必要とされ、誰にでもできる業務ではありません。知識があれば、単純作業である記帳や書類の整理も、業務量が多ければ本業にも差しさわりがでるでしょう。
記帳代行を取り入れる最も大きなメリットは、業務負担の軽減と業務効率化に伴う人件費などの、コスト削減です。
直接利益に結び付かない間接業務である記帳を、代行に委託することによって、帳簿付けや出入金伝票、領収書の管理などから解放され、経理業務のための人件費を抑えることができます。記帳自体は法令に従って行われ、企業ごとの差異は少ないため、代行導入も行いやすく、業者の変更も比較的簡単に行えることも利点でしょう。
また、会計の専門家によるアドバイスもあわせて受けられるため、業務品質の向上なども期待できます。
会計に関する相談は公認会計士がオススメ
独占業務外の会計関連業務は、公認会計士ではなくても相談を受けることが可能です。しかし、企業運営の専門知識をもつ公認会計士に一任することで、より的確なアドバイスを受けることができるようになります。公認会計士に任せるメリットについて見ていきましょう。
公認会計士は財務のプロ
公認会計士は、企業の経営状況を正確に把握することができる、専門知識を備えた会計のプロです。記帳などの簡単な会計業務なら、税理士でも対応できますが、財務諸表や月次試算表の作成、財務監査など、より企業の経営方針に関わる会計の相談は、公認会計士に任せたほうが良いでしょう。会計の中でも企業の将来的な資金計画を立てる「財務」に関する相談は、プロである公認会計士が適役です。
特に、公認会計士は、第三者に対し企業の内情を公開する「財務諸表」の信頼性を保証する立場にあります。適切な監査を受けることで、出資者の信頼や銀行の融資を受けやすくするなるため、円滑な企業運営のために活用していくと良いでしょう。
Mamasan&Companyの経理・会計業務トータルサポート
Mamasan&Companyは、記帳代行や給与計算、立替経費精算などといった日々の業務から、月次試算表や財務諸表の作成といった会社の運営に関わる財務業務にいたるまで、全ての経理・会計業務をまとめて委託することが可能です。また、企業会計の専門家である公認会計士と提携しているため、企業の会計コンサルティングとして、安心して記帳や給与計算などの経理・会計業務全般を任せられます。さらに、財務諸表の監査や会社の事業計画などの財務に関する相談もできるため、今後の企業運営を行う上で大きなサポートを得られるでしょう。
まとめ
公認会計士と税理士はともに会計の専門家ですが、専門性に違いがありますので相談をする際は、内容にあわせた相手を選ぶ必要があります。公認会計士は「財務諸表の監査」ができる企業運営に特化した会計の専門家、税理士は「税務」に関する相談ができる会計の専門家です。この二つの有資格者の、業務内容は重複する部分も多くあります。しかし、公認会計士が、無試験で税理士登録ができることからもわかるように、公認会計士は税務を含めた会計全般の知識を持っていると言えます。
企業の資金運営や組織管理、記帳や給与計算など、財務に関する部分を含め、トータルに会計業務のサポートを受けたいと考えているなら、公認会計士に相談することをお勧めします。
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