昨今、在宅勤務をはじめ、テレワーク導入を実現しなければならない状況にある企業が少なくありません。テレワークを導入するにあたり、シンクライアントが有効であると見聞きすることが多いのではないでしょうか。
しかしシンクライアントにも、様々な種類があります。そこで、シンクライアントの意味や仕組みをはじめ、多くの企業が取り入れているシンクライアントのメリットと注意点をひも解き、より効率的にテレワークを実現させるための方法まで紹介します。
シンクライアントとは
そもそもシンクライアントとは、どのようなものなのでしょうか。まずは、シンクライアントの意味と仕組みを紹介します。
「シンクライアント」の意味
シンクライアントは英語でThin clientと書きます。「シン(Thin)」は「薄い、痩せている」といった意味を持ち、「クライアント(client)」そのものの意味は「顧客」ですが、コンピューターの世界ではユーザー端末(パソコンなど)を指します。
では、「薄いユーザー端末」とはどのような意味なのでしょうか。
通常、パソコンにはCPU、ハードディスクやSSD、メインメモリなどのハードウェアがあり、そこにコンピューターを動かすためのオペレーションシステム(OS)やアプリケーションが搭載されています。そのため、電源があればパソコンだけで独立して機能するものです。
シンクライアント端末は独立して動くために必要なものが、端末にほとんど入っていません。ディスプレイやキーボードはあっても、CPUやディスク、メインメモリ、OSなどはなく、電源を入れても単独では何もできないのです。
この違いが、シンクライアント端末は「薄い、痩せた」クライアントと呼ばれ、通常のパソコンなどが「ファット(厚い、太った)」クライアントと呼ばれる理由です。
「シンクライアント」の仕組みと種類
シンクライアントは、端末が行っていたはずの作業をサーバーが担うことで、まるで手元の端末で操っているかのように見せる仕組みを用いたシステムです。
シンクライアントを実現する方法や装備は、大きく分けて「ネットワークブート型」と「画面転送型」の2種類あります。
ネットワークブート型とは
ブートとは「起動」という意味であり、サーバー上のイメージファイルを使用して、ネットワーク経由でOSやアプリケーションなどを端末で起動します。つまり、サーバー側でクライアント端末を制御しているのです。
ネットワークを使うため起動に時間はかかりますが、一度起動すれば通常の端末と操作性は変わりません。
しかし、複数の環境を利用する場合は環境ごとにイメージファイルが必要となるため、管理運用が複雑になるというデメリットがあります。
画面転送型とは
サーバーで処理した結果をクライアント端末に表示させ、端末側は画面の入出力だけ処理します。
画面転送型は、システム構成によってさらに方式が分かれますが、ユーザーが場所や端末の制限を受けにくく、テレワークなどの多様な働き方を実現しやすいとして「画面転送型」の中でも主流となっている「VDI(デスクトップ仮想化)」について、ここでは詳しく見ていきましょう。
わかりやすく説明すると、「キーボードやマウスからの入力をサーバーに送る」「サーバー側で、本来は端末が行っていた処理を行う」「結果画面をシンクライアント端末に送る」という一連の動きを端末とサーバーの間で絶えず繰り返し、仮想的な端末利用環境を作り出しているのです。
VDIはサーバーの中に仮想化されたクライアントOSを生成して、各ユーザーが端末から利用します。
テレワークでシンクライアントを利用するメリット
テレワークは、時間や場所にとらわれない多様な働き方を実現し、災害や感染症対策といった緊急時の事業継続に有効であることも、広く知られるようになりました。
しかし既存のセキュリティ環境外で業務が行われるため、情報漏えいなどの事故が発生するリスクが高まります。
そこで、テレワークにおけるセキュリティ対策の必要性と、シンクライアントの中でも多くの企業が利用しているVDI(デスクトップ仮想化)を利用するメリットについて見ていきましょう。
テレワークにセキュリティ対策が必要である理由
テレワークを実施するためには、ICT(情報通信技術)の活用が欠かせません。インターネットの高速化や暗号化などの情報セキュリティ技術の向上によって、社外の様々な場所で業務や会議が可能となりました。
一方で、社内と同様の保護がない環境でパソコンなどの端末を使い業務を行うテレワークでは、相応のセキュリティ対策が必須です。
実際に、空港やホテルなど公共の場で提供されているWi-Fi環境を悪用してマルウェア感染させるサイバー攻撃が頻発しています。もし従業員が感染に気づかず、そのまま企業のネットワークに接続すると、社内へ感染が広がるおそれが生じるのです。
サイバー攻撃以外に、利用する端末の紛失・盗難への対策も講じなければなりません。
端末自体に機密情報が残されていることは、情報漏えいのリスクが高まってしまいます。
シンクライアントのメリット ①セキュリティが高い
VDIは全ての処理をサーバー側で行い、電子データの実体ではない画面イメージだけをユーザー端末に転送するため、端末にデータが残りません。
そのため端末の紛失や盗難が起きても、顧客個人情報などの機密情報が漏えいする危険性は少ないのです。
さらにサーバーとの接続を止めれば、端末から企業が保有する情報にアクセスできないため、情報漏えい防止に大きな力を発揮するでしょう。
シンクライアントのメリット ②端末の一元管理ができる
端末側にユーザー固有のデータやソフトウェア、ハードウェアがないため、サーバーを管理するだけでよいというメリットがあります。
例えば、OSやアプリケーションへのセキュリティパッチの適用、ウイルス対策ソフトなどのインストールといった作業をデータセンターなどで管理者が一括して行なえるのです。
セキュリティ対策にかかる時間や手間を集約できると言えるでしょう。
シンクライアントのメリット ③アクセス性が高い
端末とネットワークさえあれば、自宅や出張先など場所を選ばずいつもと同じデスクトップ環境にアクセスできます。
またVDIは、必ずしも専用のシンクライアント端末を利用する必要はないため、個人所有のパソコンやスマートフォン、タブレットから利用できることも特徴の1つです。
シンクライアントを利用する注意点
シンクライアントのメリットを活用するために、注意するべき点も知っておきましょう。ここでは、押さえておきたい注意点を紹介します。
サーバー負担が増えることによるコスト増
シンクライアントは、各端末に分散していたメインメモリやCPUなどのリソースをサーバーに集約します。メリットで見たように管理者の負担が減る一方、サーバーの負担が増えるため高スペックなサーバーが必要です。
また、多数のユーザーをホストするマザーボードが故障したり、サーバーをホストする建物が災害に遭ったりして機能が停止した際には、集約率が高いほど障害が発生した場合のリスクが大きくなることも考慮しなければなりません。
BCP(事業継続計画)やDR(災害復旧)を考える上でも、複数拠点にバックアップサーバーを設置するなどのリスク対策が必要でしょう。
また、大容量サーバーや関連ソフトウェアだけでなく、ネットワークや電源、各種障害に耐えるための構造強化など、導入にあたる初期コストが高額になるケースが少なくありません。
導入完了後も、想定以上の運用コストが必要になる可能性は残ります。
環境移行の負荷が大きい
従来の端末環境からシンクライアント環境に置き換える内容が膨大であるため、環境移行の負荷に注意する必要があります。
例えば、パソコンに保存していたデータをどのようにシンクライアント環境に移行するのか、これまでパソコンで使用していたアプリケーションはそのまま移行後の環境でも動作するのか、プリンターはどうするのか、など端末環境のあらゆることを考慮し移行しなければなりません。
テレワーク導入を実現するために
シンクライアントを利用して確実にテレワークを導入し軌道に乗せるため、そのメリットと注意点を全て自社で考慮し実行することは、多くの時間や労力、コストがかかります。そこで、無駄なくスムーズなテレワークの導入・運用を実現できるとして、テレワーク導入をアウトソーシングする企業が増えています。
ここでは、テレワーク業務環境の構築から従業員のコーチングまで、トータル的な支援を提供しているMamasan&Companyのテレワーク導入支援サービスを紹介します。
AWSによるVDI環境を実現
シンクライアントの主流とも言えるVDIを実現するためには、大容量サーバーやソフトウェアを準備する必要があり多くのコストがかかることを紹介しました。
Mamasan&Companyでは、AWS(Amazon WorkSpaces)によってテレワーク労務環境を構築します。
社内のITリソースを全てクラウドへ移行するサポートも行っているため、移行にかかる負担を大幅に減らすことができるでしょう。
テレワークに必要な労働環境整備や従業員コーチングまでサポート
労務環境さえ整えればテレワークが成功する訳ではありません。勤怠管理や社内規則などの仕組み作りや、従業員へテレワークについて教育する必要もあるでしょう。10年以上のテレワーク導入実績を持つMamasan&Companyの裏付けされた的確なサポートは、不要なコストを減らしスムーズなテレワーク導入を実現します。
まとめ
テレワーク導入を実現するために有効なシンクライアントですが、そのメリットと注意点をきちんと把握し考慮して採用することが重要です。しかし、一から全て社内で取り組むことは、膨大な労力やコストがかかります。
さらにテレワークは導入して終わりではなく、運用し始めて見えてくる問題や課題といった細かな点を修正していくことで、自社の強みを発揮できるテレワークのスタイルが作られていきます。
スムーズなテレワーク実現のため、確かな実績を持つ専門家によるサポートも利用することを検討してみてはいかがでしょうか。
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