時代とともに働き方は多様化し、2018年には働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律が制定され、企業の労働環境は以前と比べ著しく変化しています。
それに伴い、柔軟な働き方としてテレワークを導入する企業も、年々増加傾向にあります。
そこで必要となってくるのが、テレワーク勤務の基準に合わせた就業規則の変更や新たな勤務規定の作成です。
今までの働き方と異なる点が多いため、通常勤務では想定しないケースが多く、既存の就業規則では対応できない可能性が予想されます。
今回は、就業規則の変更や勤務規定の作成において、どのようなことが必要か、ポイントを押さえながら今後の見直しについても具体的に紹介します。
テレワークに就業規則の重要性
テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用し、時間や場所に制限されない柔軟な働き方のことです。
労働人口が年々減少し、働き方も変化していく中で、テレワークは多様な働き方の一つといえるでしょう。
現在、テレワークの導入に際し、企業の労働環境も大きく変化しています。
就業規則は企業のルールや労働者の労働条件など、大切な規定が多くあるため、時代にあった就業規則が必要になります。
就業規則に関する法律
労働基準法では、「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない」とされており、さらに就業規則は労働者に周知しなければならないと定められています。
また、労働契約法では、就業規則を労働者の不利益になるような変更はできないとされており、労働者に不利益に変更する際は、合理的な内容で、さらに労働者に通知することが必要になります。
それ以外にも、労働者には最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害保障保険法などが適用されますので、それぞれに応じた就業規則を構築しましょう。
通常勤務との比較
テレワークを導入するにあたり、通常勤務では想定しないケースが発生することが予想されます。
例えば、テレワークでは通勤がなくなるため、労働時間の変更や労働条件が通常勤務と異なったり、通信費や水道光熱費など会社と労働者の費用負担について細かなルールが必要となるでしょう。
就業規則は会社と労働者の間で合意するものですので、双方で相違がないようきちんと定めておくことが重要です。
就業規則の定期的な見直しは必要か?
テレワークを導入するにあたっては、就業規則や勤務規定に、テレワーク勤務に関する規定が必要です。
現在の規定がテレワーク勤務にあっているか、まず確認をしましょう。
どのような規定が必要か、具体的に見ていきます。
労働時間の規定
テレワーク勤務用に新しい労働時間を設ける際は、労働時間に関する規定が必要です。
テレワークでの労働時間が、現在の規定の範囲内であるか確認をしましょう。
特に、勤務時間に指定がある場合は、テレワークの労働時間とのズレが生じるケースが多いため、見直しの対象となります。
特別費用に関する規定
通常業務では、通信費や水道光熱費などを労働者に特別負担させることはありません。
しかし、テレワーク勤務では、会社外での業務となるため費用が発生します。
特別費用として支払いをする際は、その支払いに関する規定が必要です。
人事異動に関する規定
人事異動の勤務先として、在宅勤務が勤務先となる場合は規定があるとよいでしょう。
特に、勤務地が限定された労働契約の場合は、限定地域外への人事異動には労働者の同意が必要とされ、就業規則の内容が重要となります。
勤務地変更に関する判例もあり、労働者の不利益になる行為は法律上認められていませんので、就業規則の整備は合理的におこなうのが安心です。
就業規則で見直すべきポイント
就業規則は、労働基準法や様々な法律に基づいて、規定を定める必要があります。
就業規則が整っていないと、法律違反になるケースもあるので注意が必要です。
では具体的に、テレワークを導入をする上で、就業規則でどのようなところを見直す必要があるか、ポイントを紹介します。
労働時間
テレワークによって通勤時間が削減されるため、始業時刻を繰り上げて業務を早く開始することが考えられます。
また、在宅勤務であっても、フレックスタイム制や裁量労働制など、労働基準法で定められた制度を活用することができます。
在宅勤務では、休憩時間などの把握が難しいケースもあり、その場合はみなし労働時間制を採用することも可能です。
ただし、テレワークにおけるみなし労働時間制は、厚生労働省の「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」によって、情報通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと、随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと、の2つの要件を満たす必要があると明記されています。
みなし労働時間制は、労働時間把握義務が例外的に免除され、労働者に不利に悪用される場合もあるため、裁判所では適用の可否を厳格に判断する傾向があります。
安易にテレワークだからといって、みなし労働時間制を採用するのではなく、可能な限り労働時間を把握するというスタンスをとっていきましょう。
労働条件や労働環境
労働基準法では、事業者は労働契約締結に際し、労働条件を明記することが定められています。
就業規則に記載するだけでなく、労働者への通知が必要になり、新しく雇う人にテレワークを行わせる場合には、あらかじめ労働条件通知書に明示しましょう。
また、既存の労働者にテレワークを行わせる場合にも、労働契約法に基づいて、できる限り書面で確認を行っていくとよいでしょう。
評価はどうするのか
テレワークであっても、通常勤務者と同様に平等に評価することが原則です。
しかしながら、会社によっては通常勤務者とは違った制度を用いることがあり、その場合には就業規則に明記しておく必要があります。
テレワークを行う労働者が懸念を抱くことがないよう、評価制度や賃金制度を構築していきましょう。
経費負担
テレワークで業務を行う場合には、インターネット回線やパソコン端末などが必要になり、インターネットの工事費や通信費、端末の購入費用が発生します。
これらの費用は、業務での使用は会社で負担することが一般的です。
しかし、インターネットの回線の使用については切り分けが難しく、すでに労働者でインターネット回線を設置し、プライベートでも使用ているるケースもあるでしょう。
それ以外にも、事務用品の購入費や郵送費、水道光熱費なども明確にルールを定めておかなければなりません。
事務用品費については、会社が支給したものを使用したり、郵送費については着払いや労働者が立て替えるケースが一般的です。
水道光熱費については、通信費と同様、業務とプライベートの線引きが難しいため、切り分けが不明なものについては、あらかじめ十分に話し合い、就業規則に定めておく必要があります。
定期的に見直しや改正を
労働環境が時代によって変化するのに合わせて、時代に沿った就業規則が必要になります。
では、どのような変化に合わせて見直しをしていけばよいのか、見ていきましょう。
法律の改正
就業規則は、労働基準法をはじめ、労働契約法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、男女雇用均等法、育児・介護休業法など様々な法律が関係しています。
労働関係の法律は、過去の事例を見ると、4〜5年に1回は大きな改正が行われておりますので、就業規則もそれに合った見直しが必要です。
法律に違反している場合は、最悪の場合裁判にまで発展する可能性があります。
法律の改正については、各省のホームページや、政府の官報を無料で配信している「インターネット版官報」などで確認を行うとよいでしょう。
会社の環境が変化した時
会社設立当初に作成された就業規則は、当時の労働環境にあわせて作成されていますので、会社が成長するに伴って、就業規則も見直しが必要です。
従業員が増加したり、拠点が増えたりなど従業員の労働環境が変化し、それに合った就業規則を作成していないと労務トラブルになり、裁判になるケースも少なくありません。
トラブルを未然に防ぐためにも、会社環境に合った就業規則を作成しておきましょう。
労働基準監督署の調査が入った時
労働基準監督署に所属する監督官には、法律によって権限が与えられており「臨時監督」と呼ばれる調査が行われることがあります。
要求される書類は調査によって異なりますが、就業規則が対象となるケースが多くみられます。
調査によって法令違反があった場合には是正勧告が行われ、就業規則に関する是正勧告であれば、早急に見直しと変更を行わなければなりません。
日ごろから労働環境を把握し、いつ調査がきても対応できるよう、就業規則の見直しを行っておきましょう。
まとめ
テレワークの導入に際し、導入作業に追われ、就業規則の見直しはつい後回しになりがちです。
しかし、実際の労働環境と就業規則のズレから、裁判になるケースも少なくありません。
その時代の労働環境にあわせた就業規則を作成することで、企業側にとっても労働者にとっても働きやすい環境が整えられ、円滑に業務が行うことができます。
特に、労働関係の法律は定期的に大きな改正があるため、それに合わせて就業規則も小まめに見直しをしていくとよいでしょう。
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