
BPRの進め方で最初に行うべきことは、現状の業務を可視化することです。いきなりシステムを導入したり、担当者の作業を減らしたりするのではなく、業務がどのように流れ、どこで判断が発生し、どこに手戻りや待ち時間があるのかを整理します。
BPRは、業務の一部を効率化するだけの取り組みではありません。事業に必要な成果から逆算して、仕事の流れや役割、判断基準そのものを再設計する取り組みです。Mamasan&Companyでは、業務改善を「可視化→標準化→自動化」の順に進める考え方を重視しています。
本記事では、BPRの基本的な進め方を7つのステップに分け、業務の可視化から課題整理、優先順位付け、再設計、標準化、自動化・BPO、効果検証までを解説します。
BPRはツール導入ではなく仕事構造の再設計です
BPRとはBusiness Process Re-engineeringの略で、業務プロセスを根本から見直し、再設計する考え方です。現在の仕事を少しずつ効率化するだけではなく、「そもそもこの業務は必要なのか」「この順序で進める必要があるのか」「この判断をこの役割が担う必要があるのか」まで問い直します。そのため、BPRで見直す対象は作業手順だけではありません。業務の開始条件や完了条件、情報の受け渡し、役割、判断基準、承認、システムなど、仕事を成り立たせている構造全体を確認します。
📌業務の開始条件と完了条件
📌工程間の情報の受け渡し
📌担当者や役割の分担
📌判断基準と承認の流れ
📌使用する帳票やシステム
📌手戻りや二重入力が発生する箇所
📌業務の成果を測る指標
つまり、BPRは人を入れ替えることではありません。人が変わっても一定の成果を出せる仕事構造へ再設計することが重要です。
BPRの進め方を7つのステップで整理します
BPRは「何か新しいツールを入れる」ことから始めるのではなく、現状を把握し、問題の原因を見つけ、あるべき業務へ組み替えていきます。
基本的な流れは次の7ステップです。
- 対象業務と目的を決める
- 現状の業務を可視化する
- 課題の原因を構造から整理する
- 改善の優先順位を決める
- あるべき業務を再設計・標準化する
- 自動化やBPOを適用する
- KPIで効果を確認し、改善を続ける
重要なのは、この順番です。特に「可視化する前に改善策を決めないこと」が、BPRを進めるうえでのポイントになります。
ステップ1|BPRの対象業務と目的を決めます
最初に、「何を改善したいのか」を明確にします。会社全体の業務を一度に変えようとすると対象が広がりすぎるため、まずは課題が大きい業務や、事業への影響が大きい業務から対象を絞ります。
たとえば、「処理時間を短くしたい」「特定担当者への依存を減らしたい」「手戻りを減らしたい」といった目的によって、見るべき業務やKPIも変わります。最初に目的と対象範囲を決めておくことで、BPRが単なる作業削減になってしまうことを防ぎます。
ステップ2|現状の業務を可視化します
対象が決まったら、現状の業務を正確に把握します。可視化が不十分なまま改善策を決めると、表面に見えている問題だけを修正し、本当の原因を残してしまう可能性があります。
業務の開始から完了までを一つの流れで整理します
まず、対象業務の開始条件と完了条件を決めます。そのうえで、どの情報を受け取り、誰が何を行い、どこで判断し、何を次の工程へ渡しているのかを整理します。
💡業務の開始条件と完了条件
💡前工程から受け取る情報
💡作業を担当する役割
💡判断が発生する箇所
💡次の工程へ渡す成果物
💡手戻りや二重入力が起きる箇所
💡特定の担当者しか分からない作業
最初から細かな作業だけを見るのではなく、まず業務全体を俯瞰し、その後に個別工程を詳しく確認します。全体と詳細を分けることで、一つの作業の効率だけではなく、工程と工程のつながりまで見えるようになります。
担当者の記憶を業務の情報に変換します
現場には、手順書に書かれていない判断や例外対応が数多くあります。そのためヒアリングでは、通常の手順だけではなく、「どんなときに迷うのか」「なぜ差し戻しが発生するのか」「判断に迷ったとき誰へ確認しているのか」まで確認します。特定の担当者しか知らない情報を、フローチャートや業務一覧として見える状態にすることが重要です。
Mamasan&Companyでは、時間軸、担当、分岐条件、インプット、アウトプットなどを整理し、業務全体を俯瞰する鳥瞰図と工程ごとの詳細を組み合わせて業務構造を捉えます。業務可視化について詳しく知りたい場合は、「業務プロセス可視化職人®とは?属人化を解消し、成果が出る仕事構造を設計する実践メソッド」も参考にしてください。
ステップ3|課題の原因を仕事構造から整理します
業務を可視化したら、次に問題がどこで起きているのかを整理します。ここで重要なのは、課題をたくさん列挙することではなく、複数の問題を生み出している共通原因を見つけることです。
たとえば「入力ミスが多い」という問題があったとしても、原因が担当者の注意不足とは限りません。入力項目が分かりにくい、前工程から必要な情報が届いていない、確認方法が統一されていないなど、仕事構造そのものに原因がある場合があります。
不要な工程が残っていないかも確認します
BPRでは、既存の工程をすべて残したまま順番だけを変えるのではなく、業務の目的から工程そのものを見直します。
🌀同じ情報を複数の帳票へ入力している
🌀承認のためだけに資料を作成している
🌀実際には使われていない確認項目が残っている
🌀判断者が不明確なため確認が滞っている
🌀例外対応を通常手順の中で処理している
🌀特定の担当者に判断や確認が集中している
削除できる工程、まとめられる工程、自動化できる工程、人による判断を残す工程に分けることで、再設計の方向性が見えてきます。属人化は人ではなく構造の問題です。担当者を責めるのではなく、業務が不安定になる条件を見つけます。
ステップ4|改善の優先順位を決めます
課題が見えたら、すべてを同時に変えようとせず、改善する順番を決めます。優先順位を考えるときは、事業への影響と実行しやすさの両方を見ることがポイントです。
💡顧客や取引先への影響は大きいか
💡業務が止まるリスクは高いか
💡手戻りや待ち時間は多いか
💡特定の担当者への依存は強いか
💡ほかの工程への影響は大きいか
💡改善後の効果を測定できるか
💡現場で小さく試行できるか
影響が大きく、原因が明確で、試行しやすい課題は最初の改善対象に向いています。一方、影響が大きくても関係部門が多く、前提条件が整理されていない場合は、先に可視化や関係者との合意形成を進めます。
優先順位を一覧化して共有します
課題名、発生工程、原因、影響、対応案、担当、期限、測定指標などを一覧化すると、「なぜこの課題から取り組むのか」を関係者と共有できます。BPRでは、設計として正しいことだけでなく、現場で実行できることも重要です。業務の目的と改善する理由を共有し、どこから試すのかを明確にすることで、実際の運用につなげやすくなります。
ステップ5|あるべき業務を再設計して標準化します
改善対象が決まったら、あるべき業務の流れを設計します。ここで現状の手順をそのままマニュアルにするのではなく、不要な工程を取り除き、役割や判断基準を明確にした新しい業務フローをつくります。
通常手順と例外対応を分けます
すべてのケースを一つの手順に詰め込むと、マニュアルが複雑になります。通常時の流れと、条件によって分岐する例外対応を分け、判断が必要な箇所には判断基準、確認する情報、相談先、記録方法を設定します。再設計した業務は、マニュアルやQAシートとして残します。作業手順だけではなく、業務の目的、判断基準、例外対応、完了条件まで共有することで、経験者の頭の中にあった暗黙知をチームで利用できる業務情報へ変えていきます。試行中に同じ質問が繰り返される場合は、担当者個人の問題と考えるのではなく、マニュアルや業務設計に改善余地がないかを確認します。業務改善とは仕事を減らすことだけではなく、再現性を高めることです。
ステップ6|自動化やBPOを業務構造に合わせて適用します
業務を再設計・標準化した後に、自動化やBPOを検討します。先にツールや委託先を決めるのではなく、業務の目的、手順、判断基準、成果物が整理された状態で「何を人が担い、何を外へ出し、何を自動化するのか」を決めます。
自動化する作業と人が担う判断を分けます
条件が明確で繰り返しの多い作業は、自動化を検討しやすい領域です。一方、例外対応や複数の情報を踏まえた判断などは、人による確認を残したほうが適している場合があります。AIやITツールを活用する場合も、出力の確認者、確認基準、誤りがあった場合の修正方法まで決めます。AIは整理された業務ほど効果を発揮しやすいため、自動化する前に仕事構造を整理することが重要です。
BPOも品質管理まで含めて設計します
BPOを活用する場合も、単に作業を外部へ渡すだけでは十分ではありません。委託する業務範囲、成果物、納期、品質基準、判断が必要になった場合の相談先まで明確にします。委託開始後も、手戻り、問い合わせ、品質、業務量などを確認し、必要に応じて仕事の流れを見直します。安全で継続的なアウトソーシングは、委託先選びだけではなく業務設計によって支えられます。
ステップ7|時間・品質・負荷のKPIで効果を確認します
BPRは、新しい業務フローをつくって終わりではありません。運用後の結果を確認し、必要に応じて業務構造を更新します。作業時間だけで成果を判断すると、処理は速くなったものの確認漏れが増えたり、別の担当者へ負荷が移ったりする可能性があります。そのため、時間・品質・負荷を組み合わせて確認します。
💡業務の完了までにかかる時間
💡手戻りや差し戻しの件数
💡担当者変更後に自走できるまでの期間
💡マニュアルやQAシートの更新件数
💡特定担当者への問い合わせ集中度
💡例外対応の発生件数と解決までの時間
💡自動化した作業の処理件数と確認漏れの件数
KPIは、達成したかどうかを評価するだけのものではありません。手戻りが増えたのであれば入力情報や判断基準を見直し、問い合わせが集中しているのであればマニュアルや役割分担を確認するなど、次の業務改善につなげるための材料として活用します。
BPRを始める前に確認したいチェックリスト
BPRの対象業務と進め方を決める前に、自社の状態を確認してみてください。
📌業務の目的と成果物を説明できる
📌開始条件と完了条件が決まっている
📌現状の業務フローを担当者以外も確認できる
📌手戻り、待ち時間、二重入力の発生箇所を把握している
📌判断基準と例外対応を整理している
📌改善の優先順位を決めた理由を説明できる
📌改善後の業務フローと役割を設計している
📌マニュアルやQAシートの更新方法を決めている
📌自動化やBPOの対象と、人が担う判断を分けている
📌効果を確認するKPIを設定している
当てはまらない項目が多い場合は、ツール導入や外部委託を急ぐ必要はありません。まず業務を可視化し、「現在どのように仕事が流れているのか」を把握することがBPRのスタート地点になります。
Mamasan&Companyは可視化から業務運用まで支援します
Mamasan&Companyでは、業務を可視化し、フローチャートやマニュアルによって標準化したうえで、必要に応じて自動化やBPOにつなげる考え方を重視しています。業務プロセス可視化職人®が、時間軸、担当、分岐条件、インプット、アウトプットなどを整理し、業務の全体像と詳細を把握します。そのうえで、特定の担当者だけが分かる状態から、人が変わっても再現できる業務構造へと設計し、運用に必要なナレッジを蓄積していきます。
業務可視化については「業務プロセス可視化職人®とは?属人化を解消し、成果が出る仕事構造を設計する実践メソッド」、業務設計については「業務設計とは?属人化を防ぎ、現場が回る仕組みをつくる基本と進め方」も参考にしてください。BPRは現場の努力だけで進めるものではありません。業務を可視化し、問題の原因を構造で捉え、優先順位を決め、標準化と自動化を段階的に進めることで、変化に対応できる仕事構造をつくります。
まとめ|BPRの進め方は可視化から優先順位を決めることがポイントです
BPRの進め方で重要なのは、改善策を急いで選ぶことではありません。まず現状の業務を見える状態にし、問題の原因を仕事構造から捉え、事業への影響と実行しやすさを考えながら改善する順番を決めます。
📌BPRはツール導入ではなく、仕事構造を再設計する取り組みです
📌最初に業務の開始から完了までを可視化します
📌課題の原因を工程や役割、判断基準から整理します
📌事業への影響と実行しやすさを基準に優先順位を決めます
📌再設計した業務をマニュアルとQAシートで標準化します
📌自動化やBPOは、業務構造を整えてから適用します
📌時間・品質・負荷のKPIで改善後の状態を確認します
BPRを成功させる鍵は、「どのツールを使うか」よりも先に「どのような仕事構造をつくるか」を考えることです。人が変わっても成果が大きくぶれず、事業の変化に合わせて改善を続けられる状態をつくることが、BPRの目的です。
BPRの進め方に関するFAQ
BPRは業務改善と何が違いますか?
業務改善は、現在の業務をよりよくする活動です。一方、BPRでは業務の目的や工程、役割、判断基準まで見直し、仕事の流れそのものを再設計します。既存の手順を改善するだけでは解決しにくい構造的な課題がある場合は、BPRの視点が必要になります。
BPRはどの業務から始めればよいですか?
手戻りが多い、特定担当者への依存が強い、業務が止まった場合の事業への影響が大きいなど、課題が明確な業務から検討します。その中でも、原因を把握しやすく、小さく試行できる業務は最初の対象に向いています。
BPRはシステム導入から始めてもよいですか?
システム導入を先行するのではなく、まず業務の目的、流れ、判断基準、成果物を整理することが重要です。現在の仕事構造が明確になってから、どの工程にどのツールを適用するのかを判断します。
業務の可視化では何を整理しますか?
業務の開始条件と完了条件、担当、情報の受け渡し、判断の分岐、成果物、手戻り、使用するツールなどを整理します。担当者しか知らない例外対応や判断基準も可視化の対象です。
BPRの成果は何で測ればよいですか?
業務完了までの時間、手戻りや差し戻しの件数、担当者変更後に自走できるまでの期間、問い合わせの集中度、例外対応の解決時間などが考えられます。時間だけでなく、品質と担当者への負荷も組み合わせて確認することが重要です。
BPOを使う場合もBPRは必要ですか?
BPOを活用する場合も、事前の業務整理は重要です。業務範囲、成果物、品質基準、判断が必要な場合の相談先などが曖昧なまま委託すると、問い合わせや手戻りが増える可能性があります。外部へ委託する前に、仕事構造を整理しておくことが重要です。
BPRの進め方を業務に合わせて相談できます
BPRを進めたいものの、「どの業務から手をつければよいか分からない」「現状業務をどう可視化すればよいか分からない」「課題はたくさんあるが、改善の優先順位を決められない」という場合は、まず一つの業務について、開始から完了までの流れを整理するところから始めてみてください。
Mamasan&Companyでは、業務可視化、業務標準化、BPR、BPO、バックオフィス支援、AI活用など、業務構造の整理から実際の運用までを支援しています。改善策ありきではなく、現在の仕事構造を見えるようにし、どこから、どの順番で変えるべきかを整理するところから支援します。
自社の業務をどこから見直すべきか、BPRをどのような順番で進めればよいかを検討したい方は、ぜひご相談ください。
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