BPO Times

コロナ渦で政府推進「ワーケーション」って?導入事例やメリット・デメリット

2020年8月30日 10:00 カテゴリー : BPO Times

働き方改革の煽りを受け進められてきたテレワーク化も、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、多くの企業が導入を余儀なくされる待ったなしの状況です。未だ落ち着かない情勢に、テレワーク導入企業も一時的なものから継続的なものとしてとらえるようになってきています。

そこで注目したいのが、新たに政府が推進する「ワーケーション」という働き方です。

ワーケーションは、有給休暇の取得率向上や離職率の低下など、企業側にも従業員側にもさまざまなメリットがあります。しかし、多くの企業が導入に関して無理だと感じるデメリットも存在するでしょう。

日本航空(JAL)では、2017年からトライアルとしてリモートワークでの働き方を強化し、ワーケーションとしての実施を進めてきました。今回は、日本航空など導入企業の事例と、政府が勧めるワーケーションのメリット、また注意すべきデメリットを合わせて紹介します。

ワーケーションとは?「ワーク」+「バケーション」

ワーケーションとは「ワーク」と「バケーション」を合わせて作られた造語です。旅先で仕事を行うことを意味し、観光地などを訪れ仕事と休暇を両立させることをさします。「ワーク」が示すのは主にテレワークであり、普段の業務を滞在先で行うことをワーケーションとしています。

技術の進歩から生まれた働き方

日本では1990年代頃から、情報通信技術の発展とともにIT企業を中心にリゾート地でのリモートワーク導入が進められてきました。

生活拠点から離れ、リラックスした状態で仕事と向き合うことができるため、生産性の向上が期待できる点や有給休暇取得のしやすさなど、さまざまなメリットによって導入が勧められています。

2020年では「新しい生活様式」の実践が求められるなか、政府によってワーケーションの導入が推進され、企業によってそれぞれのスタイルで実施されていくでしょう。

政府が勧める「新たな旅行のかたち」

政府は新たな旅行のかたちとして、ワーケーションの推進を提唱しています。

その背景には、新型コロナ感染拡大により新たな生活様式が求められるなか、国立・国定公園や自然など感染リスクの少ない環境で過ごすことによって、心身のリフレッシュやクリエイティブに仕事をすることができるメリットが挙げられます。

また、自粛によって起きている社会の閉塞感を解消し、観光地の活性化、地域経済の再生を目的としています。

【出典】「国立・国定公園、観光地でのワーケーションの推進」

出張や単なるリモートワークとは別物

ワーケーションは、あくまで仕事と休暇を両立することを指し、本来の職場以外で業務を行う「出張」とは別の意味を持ちます。出張では、仕事を理由に訪れた先でリモートワークを行いますが、ワーケーションで訪れる先は観光地や国内外問わず、働き手の自由であることが重要です。

また、勤務中の外出先や自宅などで仕事をする一般的なリモートワークとは違い、あくまでも働き手が休暇中に訪問先、旅行先などで働くスタイルをワーケーションとしています。

政府が推進!ワーケーション導入事例と取り組み

新型コロナ感染拡大による経済への影響や、外出自粛によって子どもたちを含めた多くの人々が受けているストレスを緩和する措置として、政府は「ワーケーション」を推進してい

ます。

これまで、いち早くワーケーションを導入し実施してきた日本航空(JAL)における事例と、さまざまな企業や自治体が取り組むワーケーション事情を紹介します。

日本航空(JAL)

2017年7月より日本航空(JAL)では、新しいテレワークのスタイルとしてワーケーションを実施しています。

これまで、在宅勤務によるテレワークを実施してきたものの利便性が低いことで利用する従業員が少なく、帰省先や旅行先など場所を問わないテレワークへ移行したことで利用者が年々増加し、有給休暇取得の促進に繋がりました。

パイロットや客室乗務員を除き、夏季(7月~8月)に最大5日のワーケーション取得が認められ、心身のリフレッシュやモチベーションのアップが期待されています。

福利厚生としての導入

働き方改革により、従業員満足度(Employee Satisfaction)の向上が求められる現在、福利厚生を目的として企業がコワーキングスペースを契約するケースが増えています。都心から離れ、心身ともに落ち着ける場所にワークスペースを設けることで、従業員は仕事をしながらリフレッシュすることが可能になるでしょう。

仕事をしながら休暇を楽しむことができるため、有給休暇取得の促進や労働生産性の向上も期待できます。

さまざまな自治体による取り組み

ワーケーションを導入する企業だけでなく、さまざまな地域でもワーケーションに対応する取り組みが進められています。

例えば、和歌山県では先進地となるべく、いち早くワーケーション誘致を開始しました。北海道では、その土地ならではのプランを用意し、「休暇・観光型」と「仕事・業務型」で受け入れを進めています。

また長野県では、東京からのアクセスが便利な代表的リゾート地である軽井沢へ「リゾートテレワーク拠点」としての誘致を推進しています。

実際には、インターネット環境が整う大規模商業施設の設置や、地域理解を深めるアクティビティ、地元企業と協力してワーキングスペースを提供するなど、その取り組みはさまざまです。それぞれの自治体や地域で、ワーケーション誘致のための施策実施や環境の整備などを行い、その地域や観光地の活性化へと繋げています。

海外のワーケーション導入事情

海外でのワーケーション導入への意識は、あくまでも休暇がメインです。日本と比較した際、有給休暇の取得率は高くブラジルやフランス、スペイン、香港などでは100%の取得率を推移しています。

ワーケーションを実施する際にも選択肢は広く、セキュリティや勤怠管理の面で旅行先や働く場所に制約がある日本とは違い、旅行先の環境に合わせて働くことも多いでしょう。企業規模に関わらず、テレワークが実施できる職種においては、さまざまな企業でワーケーションの実施が行われています。

【参考】「有給休暇取得率3年連続最下位に!有給休暇国際比較調査2018_Expedia」

ワーケーション導入のメリットとは?

新型コロナ感染拡大により、政府が新たに推進する「ワーケーション」には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

ワーケーションを導入する企業側のメリットと、実際に実施する従業員側のメリットをそれぞれ見てみましょう。

企業側①:休暇取得の促進と離職率低下

ワーケーションを導入することで、従業員は長期休暇の取得がしやすくなります。

家族との旅行や帰省がしやすくなることで、心身のリフレッシュはもちろん、ライフワークバランスの実現が期待できるでしょう。

また、従業員満足度を上げることで、生産性の向上や業務効率化、クオリティアップにも効果的です。

さらに、離職率の低下や優秀な人材の定着にも期待でき、ワーケーションの導入は企業としてさまざまな側面でメリットがあると言えます。

企業側②:従業員満足度の向上や採用アピール

働き方改革には、労働生産性の向上、離職率の低下や採用の強化、従業員満足度の向上が挙げられています。

ワーケーションの導入、実施は従業員満足度アップもちろんのこと、採用段階でのアピールや有給休暇取得の促進に効果があると言えるでしょう。ワーケーションを導入することで、従業員の働きやすい環境や体制づくりをサポートしています。また、新たな人材の採用に効果的な訴求ポイントにもなるでしょう。

従業員側①:長期休暇や有給休暇が取得しやすい

厚生労働省の「平成31年就労条件総合調査」によると、企業が付与した有給休暇日数が平均18日に対し、取得した日数は9.4日、有給休暇取得率は52.4%でした。

ワーケーションの活用は、休暇を利用し旅先でも仕事をすることができるため、有給休暇が取得しやすくなると言えます。仕事のボリュームや立場などによっては、長期的な休暇が取りにくい場合があるでしょう。

しかし、ワーケーションはリモートで仕事を行うことができるため、定例会議や取引先との連絡など、重要なタイミングに対応することも可能です。そのため、単なる休暇より長期休暇も取りやすくなるでしょう。

【出典】「平成31年就労条件総合調査_厚生労働省」

従業員側②:自由度が高く生産性向上が期待できる

ワーケーションは勤務時間内で働くスタイルとは違い、時間を自由に使うことができます。そのため、旅先で家族とともに時間を共有し、観光やアクティビティを満喫することも可能でしょう。また、完全休暇ではないことで通常より休暇を長くとることや、混雑しやすい次期を避けることなどもできます。

さらに、普段と違った環境で仕事をすることができるため、クリエイティブな発想や生産性の向上も期待できるでしょう。

ワーケーション導入は無理?デメリットとは

働き方改革の一環として、ワーケーションを取り入れることは企業側にも従業員側にもさまざまなメリットがあると言えます。

では、メリットとは反対に、デメリットになり得る不安要素や懸念点はどのようなものがあるのでしょうか。さまざまな企業から導入が無理だと言われるワーケーションのデメリットについて、企業側と従業員側それぞれの内容を確認してみましょう。

企業側①:労務管理の難しさ

ワーケーション実施の際は、従業員の動きが見えにくくなります。そのため、勤怠管理が難しくワーケーションの際の勤務時間や、業務内容を評価することが困難になるでしょう。

勤務体制による評価方法や、管理方法を事前に取り決めておく必要があります。勤怠ルールを設けて整備をする、またリモートワークに対応した勤怠管理システムを導入する、さらには成果報酬型などさまざまな方法があるでしょう。

企業にとっても、従業員にとっても、互いに納得のいく方法を整備することが必要です。

企業側②:セキュリティへの不安

政府が推奨するテレワークの導入と同様に、セキュリティに関する整備はとても重要です。

どのように業務にあたるのかは、それぞれの職種や作業方法により異なります。パソコンやタブレットなどのデバイスを旅行先へ持参し、ICT(情報通信技術)を用いて業務を行う場合にはソフト面、ハード面ともにセキュリティ対策が重要です。2段階認証を取り入れる、Wi-Fiのアクセス制限を設けるなど管理強化を徹底しましょう。

また、リゾート地での盗難や紛失には十分な注意が必要です。

従業員側①:労働時間の曖昧さ

本来であれば、休暇は仕事をしないのが当たり前ですが、ワーケーションはあえて旅行先で業務を行います。仕事を持ち込んで、旅行することを前提にしているため、仕事と休暇の線引きが曖昧になります。

さらに、リモートでの会議が長引き旅行のスケジュールが予定通りにいかない、家族と過ごす時間よりも業務を行う時間の方が長くなるなど、労働時間が思いのほか伸びてしまうといったこともあるでしょう。

従業員側②:滞在先が選べないことも

旅行に出かける際には、行き先を決めるのも楽しみの一つです。しかしワーケーションを前提とし旅先を選定する場合には、行き先や滞在先が限定されてしまうこともあるでしょう。

企業によっては、国内のみワーケーションを許可する場合や、使用できるWi-Fiが制限されるなどもあり、希望する滞在先への旅行を断念せざるを得ない場合も想定できます。

ワーケーションの実施を検討する際は、行き先や滞在期間などを事前に確認するのが安心です。

日本を活性化させるワーケーション

ワーケーションとは、観光地などへ訪れ休暇をとりながら仕事をする、新しいワークスタイルです。

新型コロナ感染拡大による閉塞感の解消や、地域経済の再生、活性化を目的に政府はワーケーションの実施を推進しています。

ワーケーションは、導入する企業にも実際に実施する従業員にもメリットがある反面、制度やルールをしっかりと作るなど慎重に検討すべき注意点もあるでしょう。

企業にも従業員にも、さらにはさまざまな観光地や地域にもプラスに働くワーケーションという新たなワークスタイルを、簡単に無理だと諦めず導入を検討してみるのはいかがでしょうか。