IT業界ではクラウド(クラウドコンピューティング)の導入は、ごく一般的な時代となりました。
クラウドの中でも、現在人気があるのがAWS(Amazon Web Services)で、導入をしている企業は年々増えています。
実際に利用されていても、AWSの多種にわたるサービス内容や、利用に際してのメリット、デメリットを理解している人は少ないのではないでしょうか。
また、AWSを導入したものの、思いのほかコストがかかってしまっているケースがあります。
今回はAWSの主な概要をはじめ、設定を見直すことでコストが削減することについて、すでに実証している企業の活用事例を含め、紹介しましょう。
AWSとは?主なサービス内容
AWSはパブリッククラウドの代表的なサービスで、インターネット小売業の大手であるAmazonが提供しているクラウドサービスの総称です。もともとはAmazonが自社のインフラを整えるために作成されたもので、他社にも提供しようと2006年3月に開始されました。
サービス内容は多岐にわたり、コンピューティング、ストレージ、ネットワーキング、データベースをはじめ、データ分析、アプリケーションサービス、デベロッパー、モバイル、IoT、人工知能、セキュリティなどがあげられます。
サービス内容は大きく分けても100以上のサービスがあり、その数は年々増加しています。
具体的にどのようなサービスがあるか、その一部を紹介します。
コンピューティングサービス
コンピューティングサービスには、仮想サーバー、コンテナ管理サービス、ウェブ管理の実行や管理など様々なサービスがあります。その中で最も利用されている一つが、Amazon EC2(Amazon Elastic Compute Cloud)と呼ばれるサービスです。
Amazon EC2は、クラウド上にインスタンスと呼ばれる仮想サーバーを作成し、Webサイトを運用することができます。初期費用がかからず、アプリケーションの要件や容量に応じて、必要な時に必要な分だけ調達できるのが魅力の一つです。
その他に、コンテナと呼ばれるアプリケーション単位で実行および管理ができるECS(Amazon Elastic Container Service)、アプリケーションのコードをアップすることでコード実行が行えるLambdaなどがあります。
ストレージ・コンテンツ配信サービス
システムの様々なデータを格納でき、コンテンツを配信できるサービスです。
その中でよく利用されているサービスが、S3(Simple Storage Service)になります。
S3では、容量に関係なく、どのウェブサイトからもいつでもデータを格納しダウンロードができるのが特徴です。
また、IAM(AWS Identity and Access Management)を使用することにより、S3へのアクセス管理が可能となります。
その他に、EC2と併用して利用できるブロック型のストレージサービスであるEBS(Elastic Block Store)、データのバックアップやアーカイブが行えるS3 Glacierなどがあります。
データベースの構築
フルマネージドで、データサービスの構築ができるサービスです。
その中でよく利用されているサービスが、RDS(Relational Database Service)です。
RDSは、クラウド上でリレーショナルデータベースのセットアップをはじめ、パッチ適用やバックアップも自動で行ってくれます。
また、Amazon AuroraやOracleなど、6つのデータベースエンジンから選択することができ、データベースのスケールアップやスケールダウンを簡単に行えます。
その他に、スケールに関係なく数ミリ秒台のパフォーマンスが維持できるDynamoDB、メモリデータストアを利用できるElastiCacheなどがあります。
セキュリティや IDサービス
AWSでは、ディレクトリの構築やアクセス管理、データ暗号化の作成や管理に関するサービスも提供されています。
Amazon Cloud Directoryは、複数のディメンションに沿った階層構造を柔軟に構築できるサービスです。
スケールが自動的に行われ、複数のアプリケーション内で共有でき、目的によって複数のディレクトリタイプを使い分けるオプションが提供されています。
その他に、アクセス権の管理を行うIAM(AWS Identity and Access Management)、データの暗号化に使用される暗号化キーの作成と管理が簡単にできるAWS Key Management Serviceなどがあります。
その他の便利なサービス
上記のサービス以外にも、AWSには様々なサービスがありますので一部を紹介します。
Amazon VPC(Amazon Virtual Private Cloud)は、ユーザーが定義したクラウド環境でAWSリソースを起動できる、いわばプライベートなネットワーク環境ができるサービスです。 VPCは必須となっており、AWS側で用意してくれます。
また、AWS Direct Connectは、ユーザー内部のネットワークを一部AWS Direct Connectに接続するため、インターネットを経由せずに接続ができるサービスです。
このサービスを使用することにより、S3などを直接作成することができます。
Amazon Lightsailは、仮想サーバーやストレージ、データベースなど、アプリケーションやウェブサイトの構築に必要な機能がパッケージされているサービスです。
月額固定料金になっているので予算が立てやすく、一つのサービスで構築できるのでコスト削減ができます。
AWSを活用するメリットは?
AWSを活用することによって、オンプレミスでは実現しない様々なメリットがあります。
具体的に、どのようなメリットがあるのか紹介します。
コストの最適化
ハードウェアやソフトウェアを購入する必要がないため、初期費用がかかりません。また、利用した分だけ支払う従量課金制のため、無駄なコストが発生しにくくなっています。
稼働時間によってスペックを変更したり、使用しない時にはサーバーを停止して利用料を抑えるなど、柔軟に運用ができます。
パッケージになっているサービスでは、月額固定料金になるものもあるでしょう。
最新のセキュリティ
AWSは世界各国の様々な規制やコンプライアンスにも対応し、常に最新のセキュリティが施されています。
現在では、セキュリティに厳しいといわれる、政府や金融機関などにも採用されています。
高い拡張性
簡単にサーバー台数の増減ができ、CPUやストレージなどの容量も、簡単に必要な時に必要な量だけ調整ができます。
スピード
ハードウェアなどの購入が発生しないため、必要な環境がすでに整っている状態で利用が可能です。サーバーの選定やHDD容量の検討なども不要で、スペック変更が簡単にできるため、スピード感をもってビジネスを行うことができます。
安定したパフォーマンス
AWSは、世界中の21のリージョンにある66のアベイラビリティーゾーンで運用されており、定期的に最新のハードウェアへとアップグレードされています。
今後もリージョンとアベイラビリティーゾーンは追加される予定で、安定した高いパフォーマンスが見込まれます。
AWSの注意すべきポイント
メリットがあればデメリットもあります。
AWSを活用するにあたっての、注意すべきポイントについて説明します。
コストが変動する
従量課金制のため、毎月のコストが変動するので、予算化が難しくなっています。
また、使用量によっては定額制サービスよりも高額になる場合があるでしょう。
ノウハウが必要
前述で説明した通り、AWSのサービスは現在100種類以上あり、今後も増えると予想されます。どのサービスを選ぶのが最適か、どのようにサーバーを構築していくかなど、AWSについての知識や技術が必要になります。
サポートがない
AWSはインフラの提供のみで、サポートなどは存在しません。
問題が発生した際はユーザーが対応する必要があるので、トラブルシュートなどのノウハウも必要になります。
AWS活用事例
実際に、AWSの導入や設定の見直しによって、コスト削減に成功した企業の活用事例を紹介します。
Mamasan&Company
国内だけでなく、世界中に200人以上のクラウドワーカーが在籍する、リモートワーカー組織を構築した実績のあるBPO企業です。
Mamasan&Companyでは、主にAmazon EC2でインスタンスを作成し、ストレージをS3として利用しています。
アクセス数の増加により、1日の平均コストが2倍近くにもなり、コストの見直しが必要になりました。
そこで、インスタンスのオン・オフをスムーズにするツールを作成し、本格的に運用できる体制を構築します。
この構築により、最大60%以上のコストの削減、さらには従来の1日平均コストを下回ることに成功しています。
株式会社ナビタイムジャパン
経路検索や位置情報などで、ユーザー数は約5,100万人にものぼり、日本人の約3分の1がナビタイムジャパンユーザーだといわれています。
特に経路探索サービスでは、天候によってアクセス数が大きく変動するため、オンプレミスでのサーバー調達やログデータを分析することが難しくなりました。
そこで、ストレージをS3、分析基盤をAmazon EMRに切り替え、他社クラウドクエリサービスである分析処理基盤のログデータを、S3から転送して分析するように変更しました。その結果、時間短縮はできたものの、データとの二重保存とデータ転送のコスト、セキュリティなど運用負荷が増大という、新たな課題に直面します。
Amazon Athenaがリリースされたことにより、ログデータをEMRで処理をし、S3に保存、 Athenaで分析することで、転送コストの削減とセキュリティの課題の解決に成功しました。
さらには、サーバーのパフォーマンスを強化したことにより約20%のコスト削減、インフラコストは約75%の削減を実現しています。
まとめ
AWSは信頼性が高く、品質が高いことから、導入する企業も年々増加し、実際に利用することで、インフラコスト削減に成功している企業が増えています。
しかしながら、導入したものの想定していたよりも、月々にかかるコストが削減されていないケースがあるでしょう。
設定の見直しや、多種にわたるサービスの活用によって、さらにコスト削減が出来る可能性もあります。AWSのコスト削減に関して検討するのであれば、一度Mamasan&Companyに相談してみてはいかがでしょうか。
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