労働人口の減少を背景に、働き方改革が掲げられ、労働人口確保や労働環境改善のための施策が2019年4月より順次適用されています。働き手が減少する中で、さらに残業の削減や有給の強制取得、フレックス制度導入などの労働者のニーズに応える必要があるため、どのように企業や労働者一人ひとりの生産性をあげていくかが極めて重要となっています。
生産性向上のためにまず思いつくのは、業務の効率化でしょう。しかし、業務の効率化は生産性向上のための1つの方法にすぎません。生産性向上には、業務の効率化、待遇の改善、個々のスキルやモチベーションのアップなど多角的にアプローチする必要があります。生産性を測る指標について理解し、生産性向上への方法を模索するための勉学の場となるセミナーや研修の導入について検討していきましょう。
働き方改革が進むなか注目され始めた「生産性向上」
みずほ総合研究所の予測によると、2016年以降、日本の労働力人口は減少の一途をたどります。これから雇用を確保し企業経営を維持するためには、働き方改革とそれに伴う生産性向上は企業にとって重要な課題といえるでしょう。
【出典】「みずほ総合研究所_少子高齢化で労働力人口は4割減」
働き方改革の目的
厚生労働省が発表した「働き方改革」は、労働者の置かれた個々の事情に応じ多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。
今日本は、少子高齢化や育児・介護負担による離職も増え、生産年齢人口が減少し続けているのが現状です。その解決策として、日本政府は一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジである「働き方改革」を軸に、日本企業の労働環境を大幅に見直す取り組みを進めています。
働き方改革と生産性向上
働き方改革を進めるうえで1つの鍵となるのが「生産性の向上」です。生産性とは簡単に言えば、労働時間に対する業務の量と質です。生産性があがれば、業務の質と量を維持したまま少ない時間で行なうことができ、長時間労働の是正、社員のモチベーションの維持やワークライフバランスの改善などにも役立ちます。働き方改革を実現するためには、生産性向上は特に重要となるでしょう。
生産性向上とその指標は?業務効率化との違い
生産性向上という言葉が知られるようになっていますが、そもそも生産性はどのように測られるものなのでしょうか。具体的な指標の出し方を学び活用することで、生産性向上の目安とすることができます。
生産性の指標とは
一般的に生産性は「労働生産性」と同じ意味合いで使われ、以下のような式で表すことができます。
生産性=生産量(付加価値)÷投入したリソース(労働者の人数や労働時間)
この生産性の値が大きくなるほど、生産性が高いといえるでしょう。
この値を指標として活用することによって、生産性の推移が把握でき、数値目標を定めて生産性を向上させていくことが可能になります。
生産性の計算方法
生産性の種類によって測り方も様々ですが、大きく分けて次の2つの考え方があります。
・物的労働生産性=生産量(生産量や販売金額)÷のべ労働時間
・付加価値労働生産性=生産量(付加価値)÷のべ労働時間
ここでの付加価値は、営業利益と人件費、減価償却費を合わせたものをさし、粗利益に近いものになります。
生産性向上と業務効率化の違い
生産性向上と業務効率化は同じような意味合いで使われることもありますが、本来、業務効率化は生産性向上のための1つの手段という位置づけです。
業務効率化とは、業務フローの見直しや業務のテンプレート化、ITツールやAIシステムの導入、さらには業務のアウトソーシング化など、業務に直接関わる工数を減らすことを指します。個人の工夫でできる小さな効率化から会社単位で行なう大きな効率化まで様々ですが、業務の効率化は生産性を向上させる重要な手段です。
一方、生産性の向上に必要となってくるのは、この業務の効率化に加え、労働環境の改善や雇用形態の見直し、社員個人のスキルアップなど多岐にわたります。
企業が取り組むべき対策とは
生産性向上のために、企業は様々な観点からアプローチする必要があります。もちろん業務の効率化もその1つですが、社員の労働環境の改善や社員個人のスキルアップ、コミュニケーションの質をあげるなど直接業務に関わらないことまで総括的に対策する必要があります。
業務の効率化
業務の効率化は、生産性を向上させるうえでも避けては通れない企業の課題です。現在はIT技術の躍進も目覚ましく、様々な業務をオンラインで完結できます。さらに、業務を効率化するための様々なクラウドソフトやアウトソーシングの利用も選択できる時代です。このような様々なツールやサービスを上手に活用することで業務量を大幅に削減できるでしょう。
雇用形態・労働条件の見直し
働き方改革でも取りあげられている、より働く側の事情に寄り添うことのできる雇用形態、労働条件の見直しも生産性を高める方法の1つです。昨今のコロナ禍においてテレワーク化が一気に加速し問題も浮き彫りになりましたが、その有効性について再認識されることとなったでしょう。
幸い日本は安定したインターネット環境があり、自宅のパソコンやスマートフォン、タブレットといった端末からリモートで業務にあたることが可能だと認知されました。在宅勤務が一般化されれば、体調不良や育児、介護などで離職してしまう生産性の高い有能な社員を引き留めやすくなります。
また会社側のメリットは有能な社員を確保するだけではありません。リモートワークの導入が進めば通勤交通費の支給が必要なくなり、オフィスを縮小し設備維持費を削減することもできるため、結果として生産性の向上も望めるでしょう。
社員個人の能動的なスキルアップ
生産性の高い社員は、自分の持つ能力を向上させることに前向きです。業務をいかに早く楽に、正確にできるようになるかを日々考え試行錯誤していくうちに、結果としてスキルを得ているとも言えます。与えられた仕事を言われたようにこなすだけでは、スキルアップも生産性向上も見込めません。会社側から様々な能力向上のための講座を提供しても、社員のモチベーションが低いと本当の意味でのスキルアップは望めないでしょう。大切なのは社員が目的意識を持った能力向上を率先して行なえる意識作りとなります。
生産性向上セミナーや研修の導入で期待される効果とは?
一般に、主催者が設定したテーマに興味のある人を募って実施される勉強会をセミナー、企業の人材育成の一環として参加が義務付けされた勉強会を研修とよびます。どちらも社外の講師を活用することで、社内だけでは難しい社員教育を補うことができるなど、多くのメリットがあります。
社員の意識改革
生産性を向上させることの意義、また向上させることによって会社や自分にとってどのようなメリットがあるかを認識させましょう。それによって、目的意識を持ち積極的に業務の効率化やスキルアップを行なう人材になるよう働きかけができます。
社員の能力向上
生産性向上のために何をしていいのかわからない、そもそも業務の無駄がどこかわからない、忙しすぎて業務改善まで手が回らない、など悩みを抱えた社員も多いでしょう。セミナーや研修では、生産性向上の第一人者が経験豊かな知識をもとに、より具体的な業務の見直し方法を伝えてくれます。講座によってはワークを通じた実践的な研修も受講でき、社員の能力の底上げが期待できるでしょう。
生産性向上を目的とした研修の費用や期間は?
生産性向上研修の費用は、期間や内容、研修方式で異なります。1つの講座は1日で完了するものが多く、必要に応じて複数の講座を受講するのが一般的です。受講方法や開催場所、講義時間の長さなどは業者によって様々ですので、自社に合った研修業者を探しましょう。参考として以下に研修業者の費用・期間の一例を紹介します。
リクルートマネジメントスクール
【研修期間】3時間~ 【費用】12,000円~
【講座紹介】
・5つの選択-卓越した生産性を目指す-
・【生産性向上】チームの成果とメンバーの時短を両立させるマネジメント
・“仕事の達人”に学ぶ! ~仕事のクロックサイクルを2倍速化する~
3時間研修コースはチケット制サービスも利用でき、1コース12,000円から手軽な費用で、社員が自分に合わせたコースを選び受講することができます。受講したいコースを自分で選ぶことで意欲も高まり、業務に必要とされる講座を効率的に受けることが可能です。
Insource
【研修期間】1日:10:00 ~ 16:45 【費用】26,400円~
【講座紹介】
・生産性向上研修~仕事の見える化でムダなく成果につなげる
・仕事の生産性向上研修~「デキる人」に共通する考え方や行動を取り入れる
・タイムマネジメント研修~仕事を効率的に進めるための時間管理を学ぶ
講義の中に議論やワークを取り入れ、研修内容が身につくように様々な工夫がされています。また、詳しい講義の内容や参加者の感想なども記載しており、ある程度内容がわかった状態で申し込みできる点も安心です。また、セミナールームでの受講が難しい場合は、オンラインでの申し込みも可能です。
リカレント
【研修期間】6時間 【費用】278,000円(~100名:講座内容による)
【講座紹介】
・業務改善研修 | 現状把握と改善のプランニング
・業務改善研修 労働生産性向上編【業務効率を上げる】
・業務改善研修【改善のプランニングから実行まで】
プロフェッショナルの講師陣が300名以上在籍する企業研修のスペシャリストです。単なる講座の提供にとどまらず、社員のキャリア形成づくりの企画からトータルな社内教育のサポートが受けられます。1500社以上の導入実績があり、ヤフー株式会社、本田技研工業株式会社など数多くの大手企業でも採用されている信頼性の高い研修業者です。
生産性向上セミナーや研修業者を選ぶ際のポイント
どのような分野の研修でも言えますが、研修業者を選ぶポイントはいくつかあります。
講座内容だけでなく、費用や開催地などの兼ね合いもありますので、自社での導入のしやすさも留意する必要があるでしょう。
社内のニーズに合った講座の精査
生産性向上セミナーの中にも様々な内容の講座があるため、社内でどのような研修が必要か優先順位はどうするかを明確にする必要があります。
研修業者によって得意とする研修分野が異なるため、講座内容をよく確認し、受けたい講座が充実しており、自由に講座をカスタムできる研修会社を選ぶと良いでしょう。また、講座の概要などは研修業者のHPからも確認できますので、あらかじめ内容を精査し自社に必要な講座を調べることが可能です。
講師の質や導入実績
講師の質が研修の質に直結するといっても過言ではありませんが、質の良い講師かどうかは講師の略歴を見ただけではなかなか判断しづらいところです。そこで、選定の際に参考にできるのは導入実績です。導入実績が多くリピーターが多い研修業者は、研修の質やコスト面でバランスが取れていると判断できます。
実施形式と費用
研修形式は、講師派遣、社外セミナー、公開講座、オンラインセミナーなどがあります。社外セミナーや公開講座によってはセミナールームが遠方になる場合があり、開催場所・日時・実施方式、さらには費用などを鑑みて自社のニーズに合った形式のサービスを選びましょう。
まとめ
社員一人ひとりのワークライフバランス改善のためにも、生産性向上は重要な鍵となります。しかし、実際に生産性向上のために何から手を付ければよいかわからない、業務が忙しく改善まで手が回らないと悩む経営者も多いことでしょう。そのような時には、生産性向上についてのセミナーや研修を受講し、経験豊富な講師から知恵を求めるのも1つの解決策となります。
今はオンライン講座も進んでおり、セミナーの開催場所にとらわれることなく、より気軽でより便利に受講することが可能です。1つの講座から受講することもできるので、まずは生産性向上についての理解を深めることから始めましょう。
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