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雇用型テレワーク導入から考える「労働法規」って?

2020年3月12日 23:02 カテゴリー : BPO Times

雇用型テレワークが政府の進める「働き方改革」の一環となり、普及・促進を推し進められています。企業もいち早く世の中のニーズにあわせなければ、近い将来予想される深刻な人材不足に悩むだけではなく、経営をも脅かすことになりかねません。

最近では、コロナウィルスが猛威をふるい、企業としても社員の安全確保、業績への不安などさまざまな課題が浮彫になり、早急な対応を迫られています。

これにより、あたりまえだった通勤、就業への見方を変えるきっかけとなり、雇用型テレワークはそれらの問題を解消する、柔軟な働き方として、注目すべきスタイルと言えます。

現在は数年前と比べ、在宅勤務や時差通勤など、勤務における負担を軽減することが可能となりました。社会全体のネット環境の充実が、雇用型テレワークという新しい働き方を実現したからです。

この記事では、テレワークの現状や導入するうえで知っておくべき「労働法規」について紹介します。

テレワーク増加の背景

テレワークとは、情報通信技術を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。

ネット環境の充実と端末の普及が時間や場所を問わず働くことを可能とし、新しい働き方としてテレワークに注目があつまっています。

さらに、政府が進める「働き方改革」の一環にテレワークの普及・促進が盛り込まれています。

企業のテレワーク導入率

総務省の平成30年通信利用動向調査のテレワーク導入状況の推移を見てみると、我が国の企業におけるテレワークの導入率は19%で、平成28年に13.2%だった時から緩やかな上昇傾向にあります。

また、企業規模が大きくなるほどテレワークの導入率が高くなる傾向があります。

【出典】「総務省_平成30年通信利用動向調査報告書」

テレワーク実施のメリット

テレワークを実施している企業の社員949人にアンケートした結果から、メリットを5つご紹介します。

■通勤による負担が少ない
■仕事の生産性・効率性が向上する
■ストレスが減り心にゆとりをもてる
■家族とコミュニケーションがとれる
■顧客サービスが向上する

最も割合が高かったのは「仕事の生産性・効率性が向上する」と答えた人の数で、54.4%にも上りました。
また、通勤による負担が少ないということも注目すべき点です。

テレワーク(在宅勤務)の特質

2012年のロンドンオリンピックでは、政府のよびかけにより、ロンドン市内にある企業の約8割の企業がテレワークを実施し、これにより交通混乱を回避できました。

日本でも、政府がオリンピック開幕式の7月24日を「テレワーク・デイ」に制定し、交通混乱を避けるための予行練習として企業に参加を呼びかけています。

在宅型テレワークに関しては、交通混乱の緩和になるというオフィス勤務にはない強みをもっていることがわかるでしょう。

テレワークの分類について

テレワークには、雇用型テレワークと自営型テレワークの2つがあります。
さらに、雇用型テレワークは、勤務する場所により3種類に分けることができます。

雇用型テレワーク

事業者と雇用契約を結んだ労働者が、自宅等で働くテレワークを雇用型テレワークといいます。

■在宅勤務:自宅でのテレワーク
■モバイルワーク:営業活動など外出先で業務を行うテレワーク
■サテライトオフィス勤務:本来の勤務先以外のオフィスで行うテレワーク

自営型テレワーク

注文者から委託を受け、自宅などの場所において行うテレワークを自営型(非雇用型)テレワークといいます。

自営型テレワーカーは、会社に雇用され自宅で仕事をする在宅勤務とは違い、個人事業主です。そのため、労働基準法など労働保護法令の適用はありません。

雇用型テレワークの導入注意点

政府が進める働き方改革実行計画に「子育て、介護と仕事の両立の手段となり多様な人材の能力発揮が可能となるため、テレワークの普及を加速させていく」とあります。

今後の日本企業は、少子化による労働人口が減り、人材確保が困難になることは目に見えているでしょう。それを解消する1つの手段として、雇用型テレワークの導入が推進されています。

では、雇用型テレワークを導入するにあたり、注意する点とは何でしょうか。
多くの企業が、導入前にさまざまな懸念を挙げています。注意すべき点について、確認していきましょう。

労使双方での共通の認識

企業側は、あらかじめ使用者と十分な協議をしておくことが理想的です。

たとえば、導入の目的が何なのか、時間の節約や労働者への負担軽減など、なぜテレワークを始めるのか共通の認識のもと開始することで、導入後に起こる疑問やトラブルを最小限に減らすことへ繋がります。そのため、納得のいくまで、丁寧な協議と手続きを踏むことがおすすめでしょう。

業務の円滑な遂行

在宅勤務を行う労働者が業務を円滑かつ効率的に遂行するために、業務内容や業務遂行方法等を文書で交付するなど、明確にしておく必要があります。

たとえば、社内の人間とどのようなツールを使用しコミュニケーションを図り、どのようなツールで業務に取り組んでいくか等、業務を進めていくうえで障壁となるものをあらかじめ予測し、解消しておくことが円滑な業務遂行に繋がります。

業務評価や賃金決定の取扱い

在宅勤務を行う労働者が、業績評価等に懸念を抱くことがないよう、評価制度・賃金制度の構築をすることが望ましいでしょう。

たとえば、在宅勤務中、育児や介護のため中抜けした時間の取扱いや、必要であれば業務ごとの賃金決定をしておくことで、不明瞭な業務と賃金設定をなくすことができます。

通信費及び情報通信機器等の費用負担の取扱い

在宅勤務に係る通信費や情報通信機器などの費用負担を、あらかじめ労使で話し合いどちらが負担するか就業規則等に定めておくのが基本的です。

業務に係る全てを100パーセント会社が負担する企業もあれば、在宅勤務手当として一定額支払う企業などさまざまです。企業は自社に合った費用負担を考え、労働者と話し合い決定することで、費用面でのトラブルを回避しましょう。

従業員同士のコミュニケーション不足にならないようする

オフィスで顔を合わさない分、どのようなツールでコニュニケーションを図っていくか考えておく必要があります。

業務の効率化をめざすどころか、従業員同士のコミュニケーション不足からくる、チーム意識の薄れが企業全体の向上心の低下に繋がります。導入前に企業側で考えることが、望ましいでしょう。

雇用型テレワークと労働法規について

テレワークを行う上で特別な法律はありませんが、雇用(労働)契約である以上、労働者に係る全ての法律が適用されます。

労働基準法、労働契約法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令がそれにあたります。

これらの労働法規で気をつけておきたい点をご紹介します。

労働条件の明示

労働基準法1項には「使用者は労働契約締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」とあります。

そのため通常のオフィス以外はもちろん、在宅勤務の場合、就業場所として労働者の自宅を明示しなければなりません。

業績評価・人事管理等の取扱い

使用者は、常時10人以上の労働者を使用する際、就業規則を作成し、行政官庁に届けなければなりません。

また在宅勤務等の労働者に対する、業績評価や人事管理について、オフィスへ出社する従業員と異なる場合、労働者への説明をきちんとしておく必要があります。この際、在宅勤務等の労働者に対し、異なる賃金形態を用いる場合、就業規則の変更手続きが必要となります。(労働基準法89条2号)

労働時間の把握

平成31年4月に労働安全衛生法が改正され、従業員の労働時間の把握が義務化されました。

長時間労働や過重労働を防止することで、従業員の健康管理等に繋げる目的があります。特に在宅勤務において、プライベートと仕事の境界線がわかりずらくなるため、企業は取扱いを間違わないよう気を付ける必要があるでしょう。

それについては、厚生労働省のホームページにガイドラインがありますので、参考にしてみてください。

【出典】「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」

雇用型テレワーク課題

オフィス勤務と違い在宅型テレワークは、業務状況などが不透明になりやすいため、その点をクリアにしていくことが課題といえます。

これまでの勤務方法を大きく変えることへの抵抗

自宅など遠隔地で働く社員は、常に仕事の様子が見えるわけではないので、労務管理がむずかしく、上司(役職者)は今までと大きく変わる働き方への抵抗が生じてしまいます。
これについては、雇用型テレワークについての知識を深めることで、少しずつ解消していくでしょう。

勤務時間が柔軟になりすぎ働きすぎる懸念

在宅ワークの労働者は自宅で就業するため、公私の区別がつきにくく長時間労働になりやすいという懸念があります。

企業は対策として、夜間労働のシステム制限や使用者等による許可制、休日深夜労働を原則禁止にするなど、さまざまな措置を取ることが望ましいでしょう。

コミュニケーションの問題

特に在宅ワーカーとオフィスワーカーのコミュニケーションが希薄になるという懸念があります。

同じオフィスにいない分、どのようなツールでコミュニケーションを取るのかあらかじめ決定し、積極的に使用していくことが得策でしょう。

まとめ

雇用型テレワークは、人材不足解消に有効ですが、まだまだ認知度や普及率が低いのが現状です。しかしながら、政府の「働き方改革実行計画」で在宅勤務ガイドラインの刷新、制度的課題の抽出などがされている段階です。

企業も雇用型テレワークの現状や改定に柔軟に対応し、これまで本人の希望とは関係なく退職を選択してきた育児中の女性、高齢者、障害者など多様な人材の登用に繋げ、安定的な人材確保を実践しましょう。

また、災害時やパンデミック発生時における事業継続性の確保にもなるため、雇用型テレワークの必要性は、言わずとも感じる時代がきているのではないでしょうか。

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