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いまや電子帳簿保存法の時代!スキャナ保存要件や対応のポイントとは

2022年3月8日 10:00 カテゴリー : BPO Times

2022年1月より施行された電子帳簿保存法改正案により、電子データ保存をするための条件や方法が簡素化され、より取り組みやすくなりました。とはいえ、実際にこれまで行っていた書類保管をやめ、電子帳簿に切り替えるにはどのような対応が必要なのかがわからない、という企業も少なくありません。

なぜ電子保存に切り替えていかないといけないのか、スキャナ保存をすることによりどのようなメリットがあるのか、スキャナ保存してもいい書類とはどれか、そして電子帳簿に切り替えていくために何をどのように導入していけばいいのか、など頭を抱える疑問ばかりです。
いっそう拍車のかかるデジタル化やIT化に伴って改正された「電子帳簿保存法」という新たな動きに対して、企業はどのような対応をしていくべきなのでしょうか。

切り離せないビジネス成長とペーパーレス化


電子帳簿保存法における目的の一つは、日本のペーパーレス化を進めることです。この2022年1月に緩和された電子帳簿保存法によって、紙媒体に固執する習慣を払拭すべく、電子データによる保存の要件や方法が簡素化されました。また、働き方改革や、新型コロナウィルスの影響で、どこにいても共有しやすい電子データが以前に比べ多く活用され、日本の「デジタル化」に対する追い風は増しています。

なぜペーパーレスが必要なのか?

ペーパーレス化を進めるべき主な理由は、SDG’s(Sustainable Development Goals)、いわゆる「持続可能な開発」を基本概念においてビジネス成長を実現させるための取り組みの一つであることです。2030年までに、よりよい世界を目指すために諸外国と同盟が交わされた今、限りある資源を大切にしながら経済発展をするために、まずビジネスシーンで大量に消費されている紙の使用量を減らすことが課題の一つとなっています。木材を資源とする紙を節約することにより、自然保護につながるからです。
また、CSR (Corporate Social Responsibility)、すなわち「企業の社会的責任」という観点や世界情勢の観点から見ても、もはやどの企業も無関心ではいられない課題となっています。

SDG’sだけでなく利便性や効率化などのメリットもあり、法改正やテレワーク促進などの取り組みで、ペーパーレス化への動きはさらに加速しています。

世界諸外国と日本のペーパーレス化の比較

先進国の日本ですが、ペーパーレス化は他国に比べて遅れているのが現状です。

2019年に行われた調査においても、一人当たりの紙消費量は世界平均を大きく上回ります。ペーパーレス化に取り組む国の中でも、バルト三国の一国であるリトアニアは政府文書の99%が電子化されているなど、世界でも群を抜いてペーパーレスが普及しており、日本でも対策の強化が必要です。
日本ではハンコや紙を重んじる文化、また、周りの状況に合わせる文化などもあり、実行するべきとはわかっているが、いまだに実行に移せていない企業も少なくありません。デジタル庁が昨年2021年9月に発足されたばかりの日本は、これからより積極的に進める必要があります。

ペーパーレス化によるメリットとは?

ペーパーレス化をすることによるメリットは自然保護だけではありません。実際の業務において、あらゆる面でペーパーレスの利便性があります。

・コストカット
紙やインク代、プリンター費用、それにかかる輸送費などに加え、大量の書類を保管するスペースの費用が削減されます。

・セキュリティー保護
紛失などで失われる可能性のある大切なデータを、セキュリティーがしっかりしたクラウドやソフトに保管することにより、リスクから保護することができます。

・情報検索の簡易化
必要なデータを探す際、わざわざ書類保管場所へ行き、該当のファイルを探して、紙を一枚一枚めくるという作業が不要になります。電子データ保存時に設定したファイル名などのキーワードを検索画面に入力し、クリックするだけで簡単に必要なデータを探し当て、すぐに確認することができます。

・情報共有の簡易化
紙の書類を持ち運ぶ必要がなくなり、電子メールなどで時間や場所を問わず、一度に複数の人と書類を共有することができます。時間や労力の浪費、交通費の節約にもつながります。

ペーパーレス導入にあたっての課題とは?

ペーパーレス化を進めるにあたって、デメリットがあることも知っておく必要があります。今後どんな問題が発生してくる可能性があるのかを知ったうえで、前もって対策を練り、周囲にも理解をしてもらうことが大切です。

・書類が見にくい
1台のパソコンで作業する際は特にですが、パソコンで作業をしながら、同じ画面上で書類を見るため画面を行き来する必要があり、紙媒体のものに比べ見にくいという問題が出てきます。慣れるまでに作業効率が落ちることも考えられるため、タブレットを配布するなど対策を考えておくことが重要です。

・導入コストがかかる
新しく導入するシステムの費用、移行に必要な作業をするための人件費、また上記であげた書類の使いにくさに対しての対策費用などが発生します。紙やインク、書類保管費用は削減できますが、新たに発生する費用についてもしっかり把握しておきましょう。

・故障等の影響
システムや機械に故障等が生じた場合、修理が完了するまで大切な情報にアクセスできない、または最悪の場合消去されてしまうというリスクも考えられます。
その万が一に備え、セキュリティー面はもちろん、バックアップ対策も備えておく必要があります。

・ITリテラシー
全ての人がパソコンなどを使いこなせるとは限りません。中にはコンピュータの使用に抵抗があり、保存作業はもちろん、見るだけでも紙でないと難しいと感じる人もいるということを念頭においておくことも大切です。いくら会議資料をデジタル化しても、個人で印刷してしまっていれば本末転倒です。このような人に、どのようにペーパーレス化の必要性を理解し、対応してもらえるかなど、相手の意見を聞き対応策を考えておきましょう。

スキャナ保存ができない書類って?

書類によって保存方法が異なるため注意が必要です。下記にて「スキャナ保存」の対象か否かを紹介しています。

スキャナ保存ができる書類

国税関係書類で、相手から受領した取引関係書類等(見積書、契約書、請求書、領収書)などが該当します。しかし、国税関係書類でも、計算、整理または決算に関して作成された書類はスキャナ保存の対象外となり、「電子データ保存」での対応となりますので、注意が必要です。

スキャナ保存ができない書類

スキャナ対応ができない書類としては、自社で作成した取引関係書類、帳簿関連書類、そして棚卸表や貸借対象表、損益計算書表などの計算や整理などされた決算関係の書類です。国税関係書類でも保存方法が異なる場合がありますので、しっかりと確認し、対応しましょう。

スキャナ保存の申請は?要件は?

スキャン保存においての改正点は大きく4つあります。2021年までの保存方法に比べ、2022年1月からの電子帳簿保存法における内容は、税務署への事前承認申請や、タイムスタンプに対する要件、チェック作業における作業工程軽減など全体的に緩和されています。実際、どのような点が2021年までの対応と異なるかをしっかり把握してスムーズに対応、対策ができるようにしましょう。

税務署長の承認が不要に

これまでスキャナ保存をする際は、事前に税務署長の承認を取っておく必要がありました。しかし、多数ある該当書類に対して、スキャナ保存の許可を事前申請する必要がなくなったことにより、担当者の業務負荷が軽減されます。

スキャナ保存時のタイムスタンプ要件緩和

スキャナ保存時に求められるタイムスタンプにおいてもいくつか要件が緩和されました。
まずタイムスタンプの付与期間が「最長約2か月と概ね7営業日以内」と延長され、入力期間と同じになった点です。これまでスキャナ保存した3営業日以内にタイムスタンプをするというタイトなスケジュールに比べより時間にゆとりが持てます。
次に、改ざんを防ぐために必要だった国税関係書類への自署や押印も不要となりました。
多数ある書類に対して行っていた押印作業はハンコ文化脱却に向けたデジタル化への大きな一歩です。また、電子データにおいて、クラウドなどで訂正や削除など過去の記録が確認でき、かつ入力期間内に電子データの保存を行ったことを確認することができる場合は、タイムスタンプの付与に代えることができます。以前はタイムスタンプによって後から行われる改ざん等の不正を抑制していましたが、修正などの変更履歴が確認できるシステム導入により、さらなる業務内容の簡素化が実現します。
そして、書類の種類等により細かく定められていた検索要件が、取引日付、取引金額、取引先の3項目のみとなりました。それにより入力作業がよりシンプルとなり作業効率向上につながります。ただし、3項目の検索要件を設定する場合、税務署職員による電子データのダウンロードの要求に応じる必要があることを留意しておきましょう。

スキャンした原本の保存が不要に

入力期間内に行う原本内容とスキャナ保存したデータの照合作業が不要となりました。
合わせて定期的な原本との照合作業が不要となったため、保存したデータがあれば照合作業のための書類原本の保管が不要となります。情報管理業務の負担や書類の保管場所などの経費が削減されるほか、これまで2名以上で行わなければならなかった照合作業も1名での対応が許可されるようになりました。

スキャナ保存の不備に対する加重措置

不正防止のため、隠ぺいや偽装などが確認された場合、その事実に関して生じた申告漏れ等に課される重加算税が 10%加重されます。スキャナ保存の方法が簡素化され、税務署長の承認などの不正抑止の項目が軽減されましたが、その分不正を行った場合の罰が重くなりました。電子データ化され、他者による確認のステップが大きく削除されましたが、気を緩めず、しっかりと正しいデーターを保存するようにしましょう。

スキャナ保存の要件を分かりやすく解説

上記で少し述べましたが、実際にスキャナ保存をする際のステップを順に述べていきます。2022年1月からスキャナ保存を行う際は、まず書類のスキャンを行います。事前に税務署へ申請する必要はありません。そして、その後の自署押印も不要のため、すぐにシステムへの入力作業に移ることができます。
入力時の注意点としては、税務署からのダウンロードに応じるのであれば、検索要件は3項目(取引日付、取引金額、取引先)を設定するのみとなります。また、タイムスタンプの付与においては、入力期間の最長2ヶ月と概ね7日営業日以内に必要に応じて対応しましょう。これまで入力作業は2名体制で行ってきましたが、改正後の2022年からは1人での確認作業が可能です。
データの入力作業完了後の定期的な原本と電子データの照合作業が不要になったため、入力作業等が全て完了したタイミングで、原本は破棄することができます。
これで「スキャナ保存」は完了です。

【参照】「電子帳簿保存法が改正されました」

快適に電帳法を導入するためのソリューション

電子帳簿保存法導入をスムーズに行うためには、どのようなステップで行うべきでしょうか。該当する書類は何か、導入にはどのような業務が必要で誰が対応するかなどしっかり精査すべきポイントを把握し、進めていきましょう。

導入のためのステップ

①電子化する書類の洗い出しとその効果を検討

どの書類が電子帳簿保存法に該当する書類なのかを見分け、保存方法は「電子データー保存」なのかもしくは、「スキャナー保存」に該当するのかを分別することがまず必要です。そして、どのような効果や結果を出したいかを社内で検討しましょう。

②業務フローの設定

書類の量や保存方法に応じて必要な工程をフローチャートにし、可視化していきましょう。そうすることにより、社内で業務分担を行ったり、経理代行の会社に外部委託するなどそれぞれの会社にあった、より効率のよい方法で進めることができます。

③システムの選定・導入

該当書類に対して、電子帳簿保存法で決められた必要項目への対応が可能か、自社の業務内容に適しているか、自社システムとの連携は可能か、クラウドかオンプレミスか、予算内に収まるかなどの条件をもとに自社に合ったシステムを選び導入します。

電子帳簿導入に向け、経理代行サービスへの依頼を検討する

この電子帳簿保存法の改正により、デジタル化を余儀なくされている世の中ですが、「うちの会社はアナログでやってきて、ITなんてさっぽりだ」という会社も少なくありません。
自ら色々と一から勉強できるのであればもちろんいいのですが、そんな時間や労力をかけることを許されていない状況の企業がほとんどです。
そんな時は、経理のプロにお任せするのも一つの解決策です。
経費清算システムの導入を検討中、導入したけどなかなか業務が進まない、思ったより処理に時間がかかり困っている、そんな悩みを抱えている方は、一度経理代行サービスへの依頼を検討してみてはいかがでしょうか。

Mamasan&Company
365日24時間稼働の経理業務代行サービスを提供しており、バックオフィス業務はもちろん、本部業務や管理業務などのコアな部分までも全て在宅スタッフが行えるよう業務フローの可視化、マニュアル化を徹底しています。
経理業務代行だけではなく、企業の規模や形態に合わせて、各社に合った決算清算システムの導入の委託や業務体制の見直しなどの相談も可能です。また、経理業務だけではなく事務業務一般、クリエイティブ業務や、翻訳業務など幅広いジャンルにて相談ができます。

まとめ

「電子帳簿保存法」という決まりに従って、日本の「デジタル化」に貢献することは今や企業にとって対応すべき重要なミッションです。しかし「電子帳簿保存法」のルールに基づいて行われる作業ですが、その方法を選ぶことは可能です。自社に合った電子帳票システムを選び、自社システムと連携をすることで、重複する作業を減らすこともできます。また業務フロー見直し、再構築していくことで業務効率のアップやそれに伴う人件費等のコストカットなど大きなメリットが得られるでしょう。

もし、ITについてほとんど知識がない場合でも、システムの導入から作業手順など始めの難しいステップを外注して少しずつ操作方法を習得していく、またはそのまま社外の経理代行サービスに丸々委託してしまう、という判断も可能です。苦手な作業にひたすら時間や労力を費やすのではなく、苦手なところはそれを得意とする会社に任せてしまい、営業やクリエイティブな業務、管理業務などに注力する方法もあります。

各企業それぞれが、どのような方法が効率化につながるのかを社内で十分に検討し、自社にとっても、デジタル化を進める日本にとってもよい結果につながるように力を尽くしていきましょう。

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